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大学院生の関口さん 全米日本語教育学会で研究発表

大学院国際協力研究科開発問題専攻(博士後期課程)の院生・関口美緒さん(指導教授:今泉喜一教授)は2013年3月21日、アメリカ・カリフォルニア・サンディエゴのマンチェスター・グランド・ハイアット・ホテルで開催された全米日本語教育学会(AATJ:American Association of Teachers of Japanese)の春季大会(2013 Annual Spring Conference)で「日本語心理動詞」に関する研究発表を行いました。
今年50周年を迎えた日本語教育学会は、全米、カナダ、オーストラリア、欧州、日本に1300名以上の会員を持ち、本部はコロラド大学ボルダー校にあります。当日は、「日本語教育法」、「日本語言語学」、「日本文学」、「第二言語習得」、「言語文化に関する報告」などの分野で約80件の発表(個人・グループ発表)がありました。

学会で発表を行う関口さん

学会で発表を行う関口さん

昨年のトロント大会に次いで2度目の国際学会での発表となる関口さんは今回、博士論文の研究課題である「日本語心理動詞研究」の内容の一部、「The Relationship between New Phase in Physiological Status and the Cognitive Radical “ta”(生理的限界点・閾値と局面変化認知基「タ」の関係)」というテーマで発表をしました。
関口さんの研究内容や学会発表等の報告を紹介します。



全米日本語教師学会で「日本語心理動詞と生理的限界点」について研究発表

大学院国際協力研究科開発問題専攻(博士後期課程)関口美緒

私は3月21日にアメリカ・カリフォルニアで開催された全米日本語教師学会で、「日本語心理動詞と生理的限界点」について研究発表を行いました。
局面変化認知基については、今泉(2010)で取り上げられています。日本語動詞では、局面が変化しその状態が開始されたのにもかかわらず、過去形の「タ」を用いて表現するという特徴があります。例えば、英語では“I am hungry.”“I am tired.”など現在形が用いられるのに対して、日本語では空腹を認知したとき“お腹すいタ”、疲労を感じた時“疲れタ”という言語表現が用いられます。
私はそのような言語表現がなぜ起きるのかという疑問から考察し、それら知覚動詞における認知の瞬間と生理的限界点・閾値との関係を明らかにしました。特に生理学的身体変化および知覚の程度・質の認知の分析により、感覚動詞と知覚動詞の言語表現の差異が生じる根拠も明らかになりました。
質疑応答ではウィスコンシン大学のJun Xu氏や香港中文大学のChi Ming Ho博士から質問をいただきました。発表後も3名の先生方(UC Davis他)から興味深い・今後の日本語教育にも役立てたいというようなご感想をいただきました。
また、夜のレセプションはEmbassy Suite Hotelに場所を移して開催されました。Mills College(San Francisco)のLewis博士による「研究授業の有用性について」の講演がありました。ルイス博士は日本と比較して、アメリカの国民性や文化からグループで授業を行なうことの困難さを指摘しました。これについて私はSouthwestern College(San Diego)で行なったグループでの発表の成功例(2009年)を発表しました。博士から感銘を受けたという感想を頂き、その後もメールで具体的な方法や結果について説明をしました。
また、AATJの会員でもある佐久間先生の誘いで、後日(3月29日)トーランス高校(L.A.群・「ビバリーヒルズ白書」の舞台となった伝統あるカレッジ並みに大規模な公立高校)を訪問することができ、アメリカの高校における日本語教育や進路についての話を聞きました。



なお、関口さんの研究の一部は2012年7月に発行された『言語と交流』15号(凡人社)の論文「日本語感覚動詞の特徴−生理的現象から言語表出のプロセスを考える」や2013年3月発行の『大学院論文集』No.10「心理動詞のアスペクト-局面指示体系による分析-」として掲載されています。また『言語と交流』16号に「生理的限界点・閾値と局面変化認知基「タ」の関係」が審査待ちの段階となっています。

2013.4.11