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第48回Academia 外国語学部公開研究会 実施報告

第48回アカデミア                   2012年11月21日(水)
於E106教室

題目:地縁と地域力

発表者:熊谷 文枝 客員教授

発表要旨:
急速に進展するグローバル社会にあって、日本の存在感が薄れつつあります。その一因は、日本の情報発信不足と、自国の理解不足にあると思います。外国に目を向けることは大切です。同時に、複雑化する国際関係問題解決には、自国・日本を正しく理解することが大切です。そこで、私たちの身近にある「地縁と地域力」をとおし、日本社会の地域性・多様性を考えました。

日本を考えるとき、ともすると大都市に注目し、全国平均値を考えます。それは日本の概要を知るには誤りではありません。しかし、日本の狭い国土に潜む地域的多様性を無視します。日本の社会文化的特色は、地域ごとに大きく異なるからです。

日本の地域的多様性を生み出した主要因は、律令時代にさかのぼる旧国名(令制国)制度や藩政の歴史にあります。また、現在の都道府県は、実質的には江戸時代の302藩に基づきます。その結果、同一県内でも東西南北、地勢、自然環境、風土・人情・慣習・生活様式、方言、気質がことごとく異なる事態が誕生しました。

例えば、山形県の伝統的世帯構造文化は、県の小藩分立圏の歴史と重なり県内でも四分割(庄内・最上・村山・置賜)されています。山形県の世帯構造と対比をなすのが鹿児島県の隠居文化です。それは、同じ南九州に位置する宮崎県とも大きく異なります。薩摩藩の麓郷士・外城制度・門割制度の影響です。急速に進展する日本の少子高齢社会を分析すると、沖縄・南九州の琉球文化圏では、子沢山の慣習が現存します。一方東北青森県は、津軽と南部の二文化圏に大別されますが、方言(津軽弁)主流社会の影響は深刻な地域医療崩壊をもたらしています。

この話をお聞きいただいた方々が、「日本の多様性に今更ながらおどろいた」と言われます。グローバル人材たる学生たちが、日本の多様性・地域性を正しく情報発信できるように、導いていきたいと考えております。