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【報告】第7回国際医療協力講演会を開催しました

 6月24日(金)、第7回国際医療協力講演会が、三鷹キャンパスの看護医学教育研究棟1階101室で開催されました。講師として、(公財)結核予防会結核研究所の宮下裕美子さんをお招きし、アジア大都市における結核対策〜「アジア大都市結核対策共同調査」というテーマでお話をして頂きました。
 講演の主な内容は、(1)「アジア大都市結核対策共同調査」(以下、共同調査)の事業概要と背景、(2)東京都における結核、(3)アジア大都市結核対策、でした。

【講演の概要】
 結核研究所は、1939年に当時の皇后陛下の令旨により設立されました。当時は、結核が「亡国病」と呼ばれており、1年間に十数万人が結核で亡くなるという状況でした。現在では、日本で結核に新にかかる人も結核で亡くなる人も大幅に減りましたが、他の先進国と比較すると多く、日本は未だに結核「中まん延状況」にあります。また、世界に目を転じてみると、2009年には940万人が新に結核にかかり、170万人が亡くなっています。その大半がアジアとアフリカの途上国で起こっています。結核研究所は、国内外の結核対策推進の基礎となる総合的な研究と結核対策従事者の研修を行うことを主な使命として活動を続けています。
 共同調査は、「アジア大都市ネットワーク21」の活動の一つで、東京都が幹事都市を務めています。結核対策が取り上げられた背景には、世界の新たな結核患者の55%がアジアにいること、都市部で結核患者が多いことがあります。共同調査そのものは、結核研究所が東京都からの委託事業として2009年から実施しています。現在、ハノイ、ジャカルタ、ソウル、台北、東京の5都市が参加をしており、大都市において結核にかかりやすい集団である高齢者や社会経済的困難層(ホームレス、貧困家庭等)に対する結核対策活動の現状と課題を明らかにし、より効果的な対策のあり方を検討しています。各都市が相互の経験から学ぶという姿勢で共同調査が行われています。今年の3月に共同調査の結果に関する国際会議が開催される予定でしたが、震災のため中止となりました。その代わりに6月初旬にテレビ国際会議が開催され、調査結果の共有化が図られつつあります。

【講演を聴いて】
 東京を含め、各都市の結核の疫学的状況や対策について話を聞くことができ、大変勉強になりました。共同調査に対する各都市の足並みがそろっていない状況で、幹事都市として調査結果をまとめて行かなくてはならない苦労や、日本の結核対策を相対的に見ることで発見があったことや、それぞれの都市で結核対策に尽力している方々とのつながりができたことなど、この仕事を通して得られたことについていきいきとお話してくださいました。
 共同調査の結果報告が準備されているということですので、それを楽しみに待ちたいと思います。
 聴衆は大学院生(国際医療協力専攻)を中心に10人ほどでしたが、講演後の質疑応答は予定時間を大幅に超えて続き、たいへん有意義な講演会でした。
 

総合政策学部・大学院国際協力研究科 教授 北島 勉

2011.06.28