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大学院生研究報告(スリランカ・タイ訪問)


 2016年2月1日から2月5日まで、修士論文作成に当たる事前の視察のため、指導教授である北島教授と共に、スリランカ民主社会主義共和国のコロンボと、タイ王国のコンケン県を訪問しました。

 私の研究テーマは<途上国における乳がん検診の現状と課題に関する研究>です。乳がんは、世界全体で女性のがん罹患率の1位であり、死亡率も上位を占めています。この傾向は先進国のみならず、途上国でも同様であり、乳がんは世界的に女性の健康問題であると言えます。この度、中進国や途上国の現状を知るため、事前に両訪問国の乳がん検診の現状を文献や政府による報告書を用い、情報収集した上で渡航しました。

 まず訪問した地域は、スリランカ民主社会主義共和国のコロンボです。コロンボはスリランカ南西海岸沿いのインド洋に面した港湾都市であり、国の経済的な中心都市です。2月1日、コロンボ大学及びスリランカ国立病院を訪問しました。今回の訪問をアレンジして下さったDr.Indikaの御案内の元、外科や病理学の教授らとお会いし、スリランカにおける乳がんの検診・診断・治療に関する現状を伺いました。また、保健省の医系技官ともお会いすることができ、スリランカにおけるがんの現状や検診に対する取り組みを伺いました。

コロンボ大学でIndika先生(右から3人目)らと

コロンボ大学でIndika先生(右から3人目)らと


 次に訪問した地域は、タイ王国のコンケン県です。コンケン県はタイの東北部に位置し、バンコクから北東へ約445km、東北部で2番目の大きさを持つ県です。2月3日・4日の2日間、コンケン病院及びがん治療センターを訪問しました。初日は、コンケン病院にて外科のDr.Tamolより、地域の乳がんの現状や、現在行われている乳がんの早期発見のためのプログラムに関して説明をして頂きました。その後、病院内を案内して頂き、実際の乳房検査を見学しながら、放射線科の医師や技師の方々と話をすることが出来ました。また、がん治療センターでは、主に乳がんに対する放射線治療の現状をスタッフの方々から伺いました。2日目は、病院内で週1回行われている、地域住民に対する乳がんの自己検診セミナーを見学し、その後がん治療センターにて、Cancer Day(2月4日:世界がんデー)のイベントに参加してきました。

コンケン病院で放射線技師さんと

コンケン病院で放射線技師さんと

コンケン病院でTamol先生(右から2人目)らと

コンケン病院でTamol先生(右から2人目)らと


 今回の2ヶ国訪問を通じて、日本と各国の医療制度の違いや、国や地域ごとで異なる医療に対する問題点を理解することが出来ました。例えば、日本と同じ医療機器があり、その機器を用いた検査を受けるためには、地域によりアクセスの問題があり、検査を受ける費用や待ち時間の問題があります。また医療提供者側の人手不足や機器の老朽化などの問題もあります。私は、日本で診療放射線技師として10年程勤務しておりますが、医療提供者側・患者側の両方の視点から見て、自身が置かれている環境がいかに恵まれているかを改めて感じました。今後は、今回得た情報を基に、乳がん検診や治療に関する費用対効果に関して研究を進めていきたいと思います。今回お世話になった方々や地域に還元できるような有意義な研究活動が出来るよう、これからもより一層努力していきます。

 コロンボでお世話になりましたDr.Indikaをはじめコロンボ大学・スリランカ国立病院の方々、コンケンでお世話になりましたDr.Tamolをはじめコンケン病院・がん治療センターの方々に厚くお礼を申し上げます。


2016年2月15日
国際協力研究科
国際医療協力専攻
博士前期課程1年
櫻井 澄枝