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第15回国際医療協力講演会が開催されました

 6月2日に、井の頭キャンパスで、第15回国際医療協力講演会が開催されました。今回は、タイ国のシリトーン公衆衛生大学講師で、現在、本学大学院国際協力研究科の研究員として来訪されているKamolnat Muangyim先生を講師としてお招きし、”The Application of the Philosophy of Sufficiency Economy in Health”(足るを知る経済と健康)というテーマでお話をうかがいました。

【講演の概要】
 「足るを知る経済」という考え方は、タイ国のプミポン国王が、国内の貧富の格差を縮小するために1950年代に提唱したものである。第二次大戦後、タイ国は農業生産の拡大や東南アジアにおける新興工業国となることを目指した。その結果、急速な経済成長を遂げたが、同時に物質主義の台頭、経済活動の海外への依存度の上昇、自然破壊、伝統的なコミュニティーや知識・知恵の崩壊などを招いた。

 1997年にはアジア経済危機が発生し、失業率や自殺率の上昇、多くの家族の崩壊、治安の悪化をもたらし、タイ社会にとって大きな転換点となった。経済成長はしたものの、不安定でバランスを欠き、持続することが困難であったことや、外国の資金に依存しすぎたという課題への処方箋として、「足るを知る経済」という考え方が注目を浴びることになった。

 「足るを知る経済」という考え方は、知識(Knowledge)とモラル(Moral)という2つの前提の上に立つ、中庸(Moderation)、合理性(Reasonableness)、緩衝(Self-immunity)という3つの柱からなる。中庸は、欲張らないこと、分かち合うこと、合理性は、よく考えて様々な選択を行うこと、緩衝は、自助・共助により、外的要因による負の影響を少なくするということを意味する。これらが相互に作用することにより、バランスがとれ持続可能な経済、社会、環境、文化の進歩をもたらすという考え方である。

 健康に関連して、私達の一生を考えると、私達は生まれ、成長し、維持し、衰え、亡くなるという経過をたどる。健康と時間は密接な関係がある。健康は生まれながらに与えられている資本であり、それを維持するのは個々人の責任でもある。その一方で、現代社会には大気や水の汚染や喫煙や飲酒などの生活習慣等々、私達人間が作り出した健康リスクが多数存在する。現在のタイでは、「病気になったら病院に行けば良い」という、医療に依存した状況があり、保健医療施設は患者で溢れ、医療スタッフの過重労働や医療費の高騰といった問題を発生するという悪循環を生んでいる。「足るを知る経済」の考え方を用いることで、人間が作り出した健康リスクを低減し、この悪循環を止めることができるのではないかと考えている。実際に、「足を知る経済」の考え方を導入し、生活を大きく改善することができた人々もいる。

 健康を全体的に捉えることが重要である。日々の生活に追われている人々に健康増進や疾病予防を説いても効果はない。「足るを知る経済」の考え方に基づいて生活を改善する結果として健康水準が向上すると言えるのではないか。
 保健医療分野以外にも、「足を知る経済」の考え方は、タイの産業界や教育で応用されている。

 講演会には、大学院生と教職員、約15名が参加し、限られた時間でしたが、活発な質疑応答が行われました。最後に主催者からの感謝の言葉が述べられ、大きな拍手とともに講演会は終了しました。

 現代社会において、「足るを知る経済」の考え方を多くの人が日々の生活で意識し続けることができれば、より住みやすい社会になるのかもしれないと感じました。タイ国内では、この考え方が様々な政策に取り入れられているということなので、次回タイを訪問する際には、その視点でもタイ社会を見てみようと思います。


国際協力研究科 教授 北島 勉
2016.06.06

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