修士論文作成に当たる研究活動のため、2016年7月8日から9月3日までの約2ヶ月間、タイ王国のコンケン県に滞在していました。今回研究に協力して頂いたコンケン病院は、県内の中心部にある三次救急対応の公立病院です。主に活動場所となったがん治療センターは、2014年に完成し、毎日治療を必要とする患者が多く集まっていました。
私の研究テーマは、<乳がん治療に関する費用分析>です。がんのステージごとの医療費と生存率を推計し、乳がんの発見時期による医療費の変化や死亡の回避について検討したいと考えています。前回は調査の準備段階の様子を報告致しました。今回は実際のデータ収集に関して報告致します。
8月に入り調査準備が整い、いよいよデータ収集が始まりました。今回の研究対象者は、2010年にコンケン病院にて乳がんと診断された患者216名です。院内の患者データは一部電子化がされていますが、患者の外来診療記録など主な情報は紙運用となっていました。まず、研究対象者のOPDカード(外来診療記録)を院内のOPDセンター(記録庫)から取り寄せました。そのOPDカードと院内のデータベースを利用し、共同研究者である外科医師のThamol先生、がん治療センターの看護師Nupienさんと共に、患者ごとの各来院の診察・検査・治療内容を確認し、各回の費用を調べました。また、がん治療センター内にあるCancer Centerの方々にも協力して頂き、院内のがん登録より、研究に必要な患者特性などの情報を調べました。さらに、がんのステージ分類に関しては、2010年の時点で未分類の患者が多く、Thamol先生に再度確認をお願いしました。
データの収集は、限られた時間で行うにはとても大変な作業でした。参照したデータはタイ語と英語が混在し、電子化されていない部分に関しては解釈に時間がかかるものも多くありました。これらの作業を共同研究者や協力して下さったCancer Centerの方々と夜遅くまで、また週末も返上して行いました。また、日本語の通じない環境で自身の意思や要望を伝えることもとても苦労しました。しかし、初めはコミュニケーションが困難であった方とも、毎日一緒に作業を行うことにより、不思議と意思疎通が取れるようになり、大変な状況の中でも楽しく作業を行うことが出来ました。
コンケンでの2ヶ月間は、言葉の壁や文化の違いに戸惑いつつも、周囲の方々に支えられながら毎日楽しく過ごすことが出来ました。さらに、今回の滞在を通じて、コンケンの皆さんとの出会いや貴重な経験を得ることが出来ました。これらは私の人生の財産となり、今後もこの御縁を大切にしていきたいと思っています。
これからデータ分析を行い、修士論文の作成に取り掛かります。この研究がお世話になったコンケンの方々に還元できるよう、これからも努力していきます。そして、研究の成果を国際学会で発表し、本研究が世界の多くの女性の健康な生活へと繋がるよう活動をすることが今後の目標です。
◆前回の研究報告記事はこちら