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くすりとピロリ菌と胃潰瘍 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

くすりとピロリ菌と胃潰瘍

日時:平成26年12月13日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:杏林大学三鷹キャンパス・大学院講堂

講演者:髙橋信一(杏林大学医学部教授)

 平成26年12月13日(土)杏林大学三鷹キャンパス大学院講堂にて杏林大学公開講演会「くすりとピロリ菌と胃潰瘍」が開催された。研究所からは蒲生、相見が出席した。講演に先立ち、杏林大学広報担当者から杏林大学医学部第三内科学教室(消化器内科)髙橋信一教授のご紹介の後、髙橋教授から「くすりとピロリ菌と胃潰瘍」と題した講演が行われた。高橋教授は健康番組や新聞などにたびたび登場し、消化器疾患の解説を行っている。(詳細は付属病院HP 当院のドクター紹介をご覧ください。)

 講演ではピロリ菌とくすりによって引き起こる胃潰瘍に関してご説明頂いた。
ピロリ菌は胃粘膜層に感染しアンモニアを産生することで胃酸を中和して生息している。ピロリ菌は5歳以下の幼年期に感染するもので大人になってからは感染しないが幼年期の感染が歳を重ねて慢性胃炎を引き起こす。慢性胃炎に環境因子(ストレス、塩分の多い食事、発がん物質など)が加わることで胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんとなることがある。そのため胃炎の段階で治療することで潰瘍や胃がんへと進行することが抑えられる。ピロリ菌感染経路は衛生環境が疑われている。現在日本人全体では1/3程度で3500万人、若年層の感染率は低いが50歳以上では半数弱と言われている。5歳以下で感染するため、現在の高齢者の感者は主に生活環境によると推測されている。
 ピロリ菌の検査は内視鏡を用いて胃の組織を一部採取し、培養法や迅速ウレアーザ法、組織鏡顕法がある。また内視鏡を使わない方法では尿素呼気試験や血液・尿・便などで抗体・抗原測定法がある。尿素呼気試験は13C尿素(医薬品として認められた尿素で安全である)を飲み、ピロリ菌がいると13CO2が産生されるので13CO2を計測する。およそ20分で済み苦痛もなく、精度が高いため検査法の主流となっている。
 2013年2月からピロリ感染胃炎が保険収載となっている。ピロリ菌除菌療法は3剤併用療法で一次除菌ではプロトンポンプ阻害剤(PPI)+アモキシシリンとクラリスロマイシンを1週間服用することで約70〜80%の方で除菌できる。一次除菌で除菌できなくても二次除菌(PPI+アモキシシリンとメトロニダゾールを一週間服用)で約90%が除菌できる。除菌の副作用としては軟便や下痢が有り得るが軽度である。除菌治療により再発を繰り返していた潰瘍が治った事例が多くあり、潰瘍で何も治療しなかった場合1年以内で72%、H2ブロッカーなどで治療した場合は25%、ピロリ菌を除菌すると2%の再発率となっている。
 腰痛やひざの痛み、頭痛、関節痛で鎮痛解熱剤(NSAID)や脳梗塞や狭心症、不整脈、心筋梗塞などで低用量アスピリンを服用している場合は胃潰瘍になりやすく、近年ではピロリ菌による潰瘍と同頻度でくすりによる潰瘍が増えている。特にNSAIDや低用量アスピリンなどは高齢者には馴染み深い。高齢者のくすりによる潰瘍の背景には、処方医が消化器科医でないことが多い、心疾患や脳血管障害などの合併症が多い、鎮痛作用のため無症状のことが多い、ピロリ菌感染率が高い、潜在的な臓器不全の可能性があるなど挙げられる。NSAIDを3か月以上服用の関節炎患者1800名中60%に内視鏡検査で胃・十二指腸の病気があったとの報告がある。NSAID長期投与が必要で胃または十二指腸潰瘍を起こした場合、PPI(低用量:15mg)を併用すると未併用より75%で潰瘍を防ぐ、同様に低用量アスピリンではPPI(低用量:15mg)を併用することで90%の方で潰瘍を防いだ報告もある。くすりによる潰瘍の予防には高容量投与を避け、プロスタグランジン製剤、PPI、H2ブロッカーを併用することが重要である。

 ピロリ菌は1983年にオーストラリアのウォレンとマーシャルにより、従来は細菌の生息は不可能とされていた胃から発見され、それに起因する胃潰瘍に関する知見は極めて新しいものである。除菌と呼ばれる概念や治療法も日進月歩である。高橋教授の講演はこの分野の臨床の第一人者であり、その豊富な経験に基づく講演は患者様にもご理解いただけるように丁寧で解り易いものであった。講演後には会場からの質問の総てに丁寧に回答された。ピロリ菌感染は胃炎や胃潰瘍等の炎症性疾患のみならず、胃がん等とも密接に関連しており、健康寿命延伸に益する講演会であった。

杏林CCRC研究所
相見祐輝

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