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甲状腺癌は怖くない?甲状腺がんの病理を知る 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

甲状腺癌は怖くない? 甲状腺癌の病理を知る

日時:平成27年3月11日(土)午後6時〜午後7時30分

場所:三鷹ネットワーク大学 教室ABC

講演者:菅間博(杏林大学医学部教授)、平野浩一(杏林大学医学部教授)


 平成27年3月11日(水)三鷹ネットワーク大学にて杏林大学公開講演会「甲状腺癌は怖くない? ‐甲状腺癌の病理を知る‐」が開催された。研究所からは蒲生、相見、松井、多田が出席した。講演に先立ち、杏林大学広報担当者から杏林大学医学部病理学教室菅間博教授と外科学教室(呼吸器・甲状腺外科)平野浩一教授のご紹介があった。

 講演では始めに菅間教授から甲状腺癌の病理を中心にご講演頂いた。講演の冒頭に、菅間教授から、病理学が基礎医学と臨床医学の二つの領域にまたがり、病気の原因を究明し身体に生じる様々な変化を研究する学問であること、杏林大学の病理学教室と付属病院病理部は一体となって病理診断、即ち顕微鏡を用いて形態の変化に基づき病気の確定診断を下す業務にあたっていると説明があった。
 甲状腺癌はがんの中では進行が遅い。甲状腺癌の原因は年齢・性・遺伝的素因などの内因と環境因子などの外因が挙げられる。環境因子などの外因は、喫煙が30%、食事や肥満などが30%、感染が10%、放射線・紫外線が2%であり、一般に放射線被曝は癌の主要な原因ではない。しかしチェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺癌のように放射性ヨード(131I)が食物として接種されると甲状腺に集積して内部被曝となり癌の原因となる。福島原発事故後、小児の甲状腺癌の発生が危惧されているが、日本は周囲を海に囲まれ、わかめや昆布・のりなどの海産物に含まれているヨードを日常的に接種している高ヨード接種地域であることから131Iは甲状腺に蓄積しにくい。また131I汚染食品の摂取規制によって牛乳が300Bq/L以下、粉ミルクでは100Bq/L以下とチェルノブリ時の10分の1以下と定められていたことからI131による内部被曝は極めて少ないと考えられている。
 甲状腺癌の組織型は90%が乳頭癌、5〜8%が濾胞癌であり、これらは増殖が遅く生物学的悪性度が低い。また甲状腺乳頭癌では29〜69%でBRAF遺伝子のV600E点突然変異、13〜43%でRET/PTC再構成があることが知られており発癌に関わる分子メカニズムが明らかになりつつある。

菅間博先生

菅間博先生

講演風景

講演風景

 平野教授からは甲状腺癌の臨床と治療法を中心にご講演頂いた。平野教授の甲状腺外科では、病理部との密な連携により的確な初期診断を可能とし、甲状腺腫瘍や副甲状腺腫瘍はもとよりバセドー病などの非腫瘍性疾患の手術治療も手がけている。
 甲状腺は喉仏の少し下で気管に付着した蝶型の臓器でおよそ20gである。甲状腺ホルモンを分泌して代謝や成長・分化、恒常性の維持などの働きをする。甲状腺の検査には第一段階として血液中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモン量測定、超音波断層撮影による甲状腺の大きさや性状・結節の有無などが行われる。第二段階の検査としては超音波下穿刺吸引細胞診による結節の細胞が癌かどうかを診断する。腫瘍が大きい場合や周囲の臓器に浸潤しているかなどはCTやMRIで、癌の転移などにはシンチグラムやPET/CTを行う。甲状腺癌は女性に多く、全癌の1.3%、甲状腺に結節がある人は全人口の4〜7%である。甲状腺癌の中で髄様癌の一部は遺伝するが甲状腺癌全体の0.3%で非常に稀である。なお乳頭癌、濾胞癌、未分化癌は遺伝しない。甲状腺癌の治療は一般的に手術であり、癌の種類や大きさによって全摘や葉切除などの切除範囲が決まる。手術は基本的に全身麻酔で行われ、術後も鎮痛剤を使うため痛みは少ない。乳頭癌や濾胞癌の10年生存率は90%以上で極めて予後良好である。手術で切除出来ない部位や切除出来ない形で再発した場合でも131I内服による甲状腺癌を焼く(放射性ヨード内用療法)や2014年に保険収載された分子標的薬のソラフェニプトシルによる治療がある。そのため甲状腺癌は治療すれば決して怖い病気では無い。
 甲状腺の病理のスペシャリストである菅間教授と臨床のスペシャリストである平野教授による講演は甲状腺癌に関する正確な知識と情報を得ることの重要性を強く示唆するものであった。

杏林CCRC研究所
相見祐輝


平野浩一先生

平野浩一先生

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