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こんなに怖い、糖尿病性足病変 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

こんなに怖い、糖尿病性足病変

日時:平成27年5月16日(土)午後2時〜午後3時30分

場所:三鷹ネットワーク大学 教室ABC

講演者:大浦紀彦(杏林大学保健学部教授)


 平成27年5月16日(土)杏林大学公開講演会・三鷹ネットワーク大学共催の「健康寿命延伸」講座「こんなに怖い、糖尿病性足病変 一生、自分の足で歩こう」が三鷹ネットワーク大学にて行われた。
 講演者の本学医学部形成外科大浦紀彦教授は日本大学医学部卒業、東京大学医学部麻酔科、埼玉小児医療センター麻酔科、東京大学医学部形成外科、武蔵野赤十字病院、東京警察病院、埼玉医科大学形成外科など経て2005年より本学医学部救急医学 熱傷センターの副センター長、2008年より同形成外科を経て、2013年に同形成外科・本学保健学部看護学科病態学兼担教授に至る。褥瘡治療、熱傷、重症虚血肢の治療・フットケアなどで実績を挙げられ、第8回日本下肢救済・足病学会学術集会にて会長を務める。

大浦紀彦先生

大浦紀彦先生

会場風景

会場風景

・「こんなに怖い、糖尿病性足病変 一生、自分の足で歩こう」

 近年、糖尿病性足病変が増加しています。糖尿病患者の15‐25%が足潰瘍を経験し、適切な治療がなければ糖尿病性足潰瘍の14‐20%が切断に至ると言われています。切断を回避するには予防と早期発見が重要です。どのような人が、足病に罹患しやすいのか。何に注意すれば良いのかをお話します。

 糖尿病は血糖値が高くなる病気であり、全身に様々な症状を引き起こす。糖尿病には腎不全、神経障害、網膜症の有名な3大合併症がある。この内、足に関係が深いのは神経障害である。高血糖が続くと神経細胞にソルビトールが蓄積することで神経線維に異常をきたす。痛みやしびれなどが症状に現れるが進行すると感覚が無くなる神経麻痺が生じる。神経障害は筋緊張の不均等・筋肉の委縮・腱の拘縮から関節可動域の制限・足部変形を招き胼胝形成に至る。胼胝をそのまま放置しておくと胼胝下に傷ができ潰瘍となる。傷から感染を起こし膿が溜まり、増悪すると救命のために足を切断することがある。
 また糖尿病では血管内膜下にカルシウムが沈着し狭窄や閉塞も生じることがある。血管の狭窄や閉塞では心筋梗塞や脳梗塞の他に末梢動脈性疾患(Peripheral Arterial Disease ; PAD)がある。PADは増加傾向にあり、背景に超高齢社会への移行・糖尿病患者増加・透析患者増加がある。PADが進行すると安静時疼痛や足趾の壊疽が起こり、重症下肢虚血(Critical Limb Ischemia; CLI)となる。CLIの5年生存率は大腸がんよりも低く予後不良で足切断の可能性もあるが、早期に発見して血管拡張治療を行えば足を助けることができる。CLIの発見にはABI(Ankle / Brachial Index)検査が一般的である。ABIは上腕と足首の血圧比のことで通常の足の血圧は腕の血圧とほぼ同じ位だが下肢血管の閉塞・狭窄があると下肢血圧が低下する。ABI以外にはレーザーを用いて皮下血流の途絶する圧を計測する皮膚灌流圧(Skin Perfusion Pressure : SPP)検査があり、CLIアセスメント・糖尿病性足病変や石灰化症例の重症度評価などが適応される。PAD・CLIの治療には糖尿病代謝内科による基礎疾患治療、形成外科などによる創傷治療、循環器内科や血管外科による血行再建がある。CLI治療では創傷治療の前に血行再建を行う。歩くなどの適度な運動は心疾患リスクを減少させることや心臓リハビリテーションでの廃用障害予防などで重要となる。そのため下肢救済は生命予後に大きな影響を与える。
 足病や足切断の予防のためには①裸足で生活しない、②やけどに注意、③爪から感染をおこす、④靴や靴下にも気を配るなど自分の足に興味を持つことから始め、足の変形や胼胝の有無・皮膚が紫色になっていないかなどをよく観察することが重要である。米国には足病医という足専門診療があるが日本では足に対する認識がまだまだ低い現状である。本学付属病院では形成外科を中心に複数の診療科や専門看護師、義肢装具士などが連携して下肢救済フットケア専門外来を開設している。

 本講演会には三鷹市民35名を含め66名が参加し、女性が約2/3、60代以上がほぼ半数であった。参加者の約2/3が「講演テーマに興味」、また四分の一が「自己啓発」を目的として参加した。半数が「非常に満足」、四分の一が「まあまあ満足」と評価している。糖尿病に由来する足の病変は、単に歩行の障害に留まらず、さらに下肢切断に至ることも少なくない。予防と適切な治療、さらに日常から注意の重要性が指摘され、健康寿命の延伸に意義ある講演であった。

杏林CCRC研究所
相見祐輝

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