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動悸、息切れ、胸痛、失神 あなたはどんなとき医者にかかりますか?

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

動悸、息切れ、胸痛、失神 あなたはどんなとき医者にかかりますか?

日時:平成27年5月23日(土)午後2時〜午後3時30分

場所:三鷹ネットワーク大学 教室ABC

講演者:吉野秀朗(杏林大学医学部教授)


 平成27年5月23日(土)杏林大学公開講演会・三鷹ネットワーク大学共催の「健康寿命延伸」講座「動悸、息切れ、胸痛、失神 ~あなたはどんなとき医者にかかりますか?~」が三鷹ネットワーク大学にて行われた。
 講演者の本学医学部循環器内科吉野秀明教授は慶應義塾大学医学部卒業、慶応義塾大学病院、済生会中央病院、足利赤十字病院、向島済生会病院、米国ペンシルバニア州ガイジンガーホスピタル心臓研究所など経て、1990年より本学医学部付属病院に赴任、現在循環器内科と血液内科で構成される第二内科の教授を務めている。

吉野秀朗先生

吉野秀朗先生

会場風景

会場風景

 動悸、息切れ、胸痛、失神は、心臓疾患の典型的症状ですが、一方で、そのような症状の原因が、心臓疾患ではなかったり、必ずしも心配する病気とは限らなかったりします。しかしまた、胸の症状ではないのに、重大な心臓血管系の病気であったりもします。心臓血管系の病気の症状を中心に、どのような場合に危険で、どのような場合には心配しなくてよいか、具体的なケースを見ながら考えてみましょう。自分の体の中でおこっていることに耳を傾け、自らの体をチェックしてみましょう。

 健康診断で異常が見つかった時や症状のある時に医者にかかるが、いつもと体調が異なる時や気分が悪い・冷や汗をかくなどの際にも医者にかかると良い。医者にかかる際は、いつもの様子を知っている医者(かかりつけ医)に診てもらう事で状態の違いが分かる。また処方された薬が効かなくても、すぐさま他の医者にかかるのではなく、繰り返し同じ医者にかかることが重要である。医者は経過で判断するため、薬が効かないなら薬を変えて経過を観察する。
 心臓疾患での症状には、動悸・息切れ・胸痛・失神がある。動悸は通常とは異なる不快に感じる心臓の拍動感で心疾患であればどのようなものでも、また消化器疾患や内分泌疾患、アレルギーや自律神経障害などの全身疾患でも起こりうる。息切れは呼吸器内科に受診する場合があるが原因として呼吸器以外に貧血や循環器疾患、甲状腺機能亢進症なども有り得る。胸痛は安静時であれば急性大動脈解離や急性心筋梗塞、安静時狭心症、気胸や肺腫瘍など様々な疾患が、体動時では労作性狭心症や肋間神経痛、筋肉痛などが考えられる。失神は大脳皮質全体あるいは脳幹の血流が瞬間的に遮断されることによって生じる一過性の意識消失発作である。通常は数分で回復して意識障害などの後遺症を起こすことはないが、倒れた際に頭部や四肢などに外傷を負うことが多い。失神の原因は除脈性や頻脈性の不整脈、器質的心疾患や心肺疾患などの循環器疾患であるが、自律神経障害による起立性低血圧や神経調節性失神症候群もある。また失神の類似の症状として浮遊性めまい、痙攣、意識障害などがあり、疾患鑑別には様々な検査が必要となる。動悸、息切れ、胸痛、失神は心臓血管系疾患の代表的症状であるが、心臓以外の疾患でも見られることがあるため専門医の診察・検査が必要となる。
心臓疾患の場合、日常の様子を継続的に把握するかかりつけ医を持つことが重要である。動悸・息切れ・胸痛・失神等の症状がある時、不安や心配がある時、躊躇せずに早めにかかりつけ医に相談のうえで大学病院等の専門医を受診することが大切である。大学等の専門医はかかりつけ医と緊密な連携の基に医療に当たることに努めている。

 本講演会には三鷹市民37名を含め73名が参加し、女性が半数超、70代以上がほぼ半数であった。参加者の約半数が「講演テーマに興味」、また四分の一が「自己啓発」を目的として参加した。60%強が「非常に満足」、四分の一が「まあまあ満足」と評価している。
 高齢社会において心臓・循環器疾患は極めて高頻度の疾患であり、アンケートからは参加者自らまたは家族に何らかの既往を持つ方が多数参加されていると推測できた。今回の講演では疾患や症状の解説に加え、かかりつけ医と大学病院の上手な使い分けなど、日常の健康管理と異常を感じた際の対処法についても解説が行われた。高齢社会におけるかかりつけ医を持つことの重要性を強調した講演であり示唆に富むものであった。

杏林CCRC研究所
相見祐輝