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お父さんの健康を考える 前立腺肥大症・前立腺がんの最新治療法 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業

市民公開講演会

お父さんの健康を考える 前立腺肥大症・前立腺がんの最新治療法

日時:平成27年10月24日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:八王子学園都市センター イベントホール

講演者:桶川隆嗣(杏林大学医学部教授)


 平成27年10月24日(土)杏林大学公開講演会「健康寿命延伸」講座「お父さんの健康を考える 前立腺肥大症・前立腺がんの最新治療法」が八王子学園都市大学いちょう塾にて行われた。講演者の本学医学部泌尿器科学教室桶川隆嗣教授は、本学医学部卒、同大学病院泌尿器科、米国テキサス大学(サウスウェスタンメディカルセンター)泌尿器科留学を経て、2014年より本学医学部泌尿器科教授に就任、日本泌尿器科学会専門医・指導医、泌尿器腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、癌治療認定医として活躍してきた。

・「お父さんの健康を考える 前立腺肥大症・前立腺がんの最新治療法」

 我が国では高齢化社会を迎え、男性特有の疾患である前立腺肥大症や前立腺癌を含めた前立腺疾患が急増しています。前立腺疾患に対する治療法は内科的治療ならびに外科的治療を含め、日々進歩しています。講演では前立腺肥大症の症状・検査法・治療法、前立腺癌に対する検査法や各種治療法について解説します。

 前立腺は男性のみにある器官で膀胱下部に尿道を囲むように存在し、精子の運動・保護をする前立腺液を分泌する。
 前立腺肥大症(BPH)は中高年男性にみられる進行性の疾患である。患者数は44万人であるが、潜在患者数は400万人で55歳以上の男性で5人に1人がBPHと考えられている。加齢とともに男性ホルモンなどの影響を受けて良性に肥大化し尿道を圧迫する。主に尿勢低下、尿意切迫感、夜間頻尿、残尿感の症状がみられる。進行し悪化すると尿道が完全にふさがり排尿できなくなるため早期治療が重要である。BPH検査は、国際前立腺症状スコア(IPSS)や過活動膀胱症状スコア(OABSS)などの問診、尿流測定、前立腺特異抗原(PSA)検査、前立腺超音波検査・直腸診などがある。BPH治療は生活習慣指導、PDE5阻害薬・5α還元酵素阻害薬・α1遮断薬などを用いた内服治療がある。症状が重い、または薬物療法で効果が不十分な場合には内視鏡手術が行われる。
 前立腺癌は社会の高齢化や食生活の欧米化、診断法の進歩により増加している。2025年には胃がんを抜き6~7人に1人が罹患すると予測されている。前立腺肥大症は前立腺移行領域が肥大し転移することはないが、前立腺癌は主に前立腺辺縁領域に発生し、他の臓器に転移する。症状は前立腺肥大症と似ているが骨転移に伴い腰痛や四肢痛が現れる。診断はPSA検査、直腸診(触診)、経直腸的超音波検査などを行い、前立腺生検で確定する。治療は患者さんの年齢、全身状態や合併症の有無、がんの進展度や悪性度、患者さんの希望が重要な要素で、手術療法、放射線療法、内分泌療法などがある。手術療法では2012年より保険適用されたロボット支援下前立腺全摘除術が注目されている。ロボット手術では合併症の軽減や出血量の減少などの安全性、痛みの軽減や早期社会復帰などの低侵襲、手術前と同等の機能保持などが期待されている。ロボット支援下前立腺全摘除術は限られた施設でのみ実施可能で、多摩地区では本学病院と他の1病院のみである。
 前立腺疾患は男性の加齢に伴う疾患であり、放置すると健康寿命を損なう原因の一つとなる。特に、前立腺癌は頻度も極めて高く、今後の高齢社会でもその早期発見と治療は重要な課題である。予後の改善が期待できる最新の治療法の導入は朗報であり、今後の更なる発展を期待したい。

杏林CCRC研究所
相見祐輝