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排尿から健康状態を知る ~ トイレで健康チェック ~ 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

排尿から健康状態を知る ~ トイレで健康チェック ~

日時:平成28年10月1日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:八王子市学園都市センター イベントホール

講師:桶川 隆嗣(杏林大学医学部泌尿器科学 教授)


講演概要
 ”排尿のトラブルで悩んでいらっしゃる方はいませんか? 排尿の問題は、なかなか相談しにくい問題です。特に年齢が進むと、身体の不調が増えていくこともあり、排尿で困ったことがあっても「歳なんだからしかたない」とあきらめてしまいがちです。この講演では、尿が出にくい(排尿困難)、尿がもれる(尿失禁)、尿が出る回数が多い(頻尿)、特に夜間に何度もトイレに行く(夜間頻尿)、排尿したくて我慢がきかない状態(尿意切迫感)などの排尿状態から考えられる病気について、わかりやすく解説します。これらの排尿状態に重大な病気が潜んでいる場合があることもお話します。”

 10月1日の午後、八王子市学園都市センターイベントホールを会場に医学部泌尿器科学・桶川隆嗣教授による公開講演会「排尿から健康状態を知る ~ トイレで健康チェック ~」が開催され、地域の住民94名が参加された。桶川隆嗣教授は杏林大学医学部のご出身で、杏林大学病院泌尿器科、1999年から2001年まで米国テキサス大学・サウスウェスタンメディカルセンターの泌尿器科への留学等を経て、2014年より泌尿器科学教授として腹腔鏡手術やロボット手術等を取り入れた診療に従事されている。本講演で桶川教授は夜間頻尿、尿失禁、過活動膀胱、前立腺肥大症、前立腺がん等に原因と診断、治療について詳細に解説された。
 成人は平均一日に1リットル以上の水を飲み、同量を排尿する。この排尿は人の生涯で絶えることなく継続される基本的な身体活動であり、排尿にかかわる器官のうち尿道の構造は男女で異なる。高齢化に伴い夜間頻尿や排尿困難、また尿漏れ等、男女それぞれに問題が生じることが多いが、そのトラブルは極めて口に出しにくい。排尿のトラブルが原因となり、外出を避ける、従来のライフスタイルを変更する等、「日常生活の質Quality of Life」を損なう状態に至りかねない。排尿トラブルは背景に前立腺がん等が原因として存在する可能性は否定できないが、一般的には生命を直接に脅かす疾患とは言い難く不可避な加齢に伴う変化と捉えられ、積極的な治療が等閑となることが多い。しかし、桶川教授は「夜間頻尿」と「転倒に伴う骨折」が相関することを示し、排尿トラブルやそれに伴う不活発なライフスタイルが健康寿命を損なう原因ともなることを示した。そのうえで、多くの治療薬が存在する事に加え、杏林大学病院で行われている最先端の前立腺ロボット手術が患者さんの負担が軽いことを動画で示し、積極的な治療の重要性を強調した。
 排尿トラブルを含め、加齢に伴いQOLを損なう可能性のある多くの問題が生じる。しかし原因を特定し、適切な治療を行うことで改善できるものもあり、QOLを維持できる可能性もある。超高齢社会と超少子社会が同時進行する中で持続できる社会を維持していくためには、可能な限り高齢者も社会参加をすることが求められる。加齢と諦めないことも選択肢であるかもしれない。

杏林CCRC研究所
蒲生忍