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岩手県出張報告(第2回)


出張者:CCRC研究所長 蒲生 忍

出張日時:平成28年11月6-8日

出張場所:岩手県八幡平市 オークフィールド八幡平


 現在、各地で日本版CCRC構想に基づき「生涯活躍のまち」としての高齢者コミュニティの検討と創造が進められている。本学がCOC+事業において連携する岩手県でも、八幡平市においても日本版CCRC「生涯活躍のまち」としてサービス付高齢者住宅「オークフィールド八幡平」(以下、オークフィールド)が開設され、今年6月26-27日にはオークフィールドを訪問し、その開設と開設後の経緯と背景や課題等を調査した。人生の最終章を送る可能性のある場所の選択に際し、移住の決断自体、移住後の時間の過ごし方と楽しみ方、都市との環境の違い、特に交通環境と八幡平市の環境としての冬季の積雪への懸念等の課題が提示された。本出張ではこれらの課題の中で、特に生活を楽しむために必須の交通環境の課題、特に公共交通機関で到達可能な範囲を体験し問題点を考察する資料を収集することを目的とした。


 以下は利用した岩手県下の公共交通機関の概要である。
 11月6日晴れ但し風は強い。オークフィールドは県北バスの盛岡と松川温泉を結ぶ路線の東八幡平病院前から約300mの距離にある。13時に盛岡に到着し、盛岡駅発13時42分の岩手県北バスの路線バスの松川温泉行きでオークフィールド八幡平最寄りの東八幡平病院に向かった。途中、数カ所で乗降があり、14時30分過ぎの大更駅では、私以外は全員降車した。午後3時過ぎ、定刻から10分以内の遅れで東八幡平病院前に到着する。徒歩数分でオークフィールド到着した。バスの乗客は常時数名、盛岡市内は数カ所で乗降がある。大更駅以降は私以外の乗客はいなかった。自家用車での盛岡からオークフィールドへはGoogleでは高速道路利用で41.8km 40分、高速道路不使用かつ渋滞なしで35.6km 50分と表示される。
 11月7日快晴で穏やか。八幡平市の委託で県北バスが地域交通コミュニティバス(以下コミバス)運行している。今回は始発駅の八幡平市役所(JR花輪線北森駅隣接)から八幡平市内の集落、八幡平国民健康保険西根病院、JR大更駅、温泉施設「おらほの湯」、再び西根病院前に戻り、東八幡平病院までの区間を乗車した(合計約23km、時刻表上の所要時間1時間5分)。八幡平市役所11時30分発のコミバスは車両トラブルのため約10分遅延して到着した。市内の要所の間を丁寧に繋ぎながら運行した。所要時間1時間強、平均乗客数5名程度であった。このコミバスはその後さらに市内を周回し一周2時間で、八幡平市役所に戻る。国道と県道上は所定の停留所、それ以外は任意の場所で乗降可能、料金一律100円である。このコース一日一回の運行である。運行経路は道幅が狭い所もあるが、交通量が少なく信号も少ないため当初の遅れを拡大することなく順調に進んだ。Googleでは市役所からオークフィールドまで最短で11km、16分と表示される。ちなみに杏林大学三鷹キャンパスから西国分寺駅と高円寺駅が約11km、所要時間は夫々29分と34分と表示される。
 11月8日小雨で冷える。10時過ぎの盛岡行きの県北バスに東八幡平病院前で乗車した。路線バスはほぼ定刻通りの運行、乗客は常時数名程度、適度の乗降を繰返し、盛岡駅に到着する。


 八幡平市の公共交通については八幡平市が27年11月の実態調査等を踏まえて作成し28年3月に公開した「八幡平市地域公共交通網形成計画」(www.city.hachimantai.lg.jp/pdf/八幡平市_網形成計画_last.pdf)に詳細に記載されている。
 八幡平市は南北50km以上、東西に30㎞と広大で、首都圏でいえば南武線、武蔵野線、京葉線で囲まれる地域にほぼ相当する。市内を東北自動車道とJR花輪線が鍵の手型にほぼ縦貫する。市の南部の花輪線の北森、平館、大更駅周辺地域に人口26,000人弱の多くが居住する。岩手県は車社会で、八幡平市では住民の足は基本的に自家用車が担っている。交通量が全体的に多くなく、交通渋滞はほとんど発生しないようである。幹線道路以外では道幅は広くないが車は一定の速度で走り、単位時間当たりの移動範囲が都市と比べて大きく、車での移動の定時性は高い。オークフィールドの最寄りJR駅は花輪線大更駅までは12.5kmある。JR花輪線は朝夕の通学・通勤時間帯の各4本を除き、大更駅着で10時以降14時半までは運行していない。岩手県北バスは盛岡から大更駅を経由して八幡平ロイヤルホテルまたは松川温泉間を概ね1時間1便の頻度で路線バスを運行している。県北バスが運行していない地域は八幡平市が県北バスと安代観光タクシーに委託するコミバスが一日1-2回運行する。その他にタクシー会社が3社あるが全体で運行車両数は30台以下と規模は小さい。
 今回わずかな体験ではあるが、公共交通機関の運行も少なくとも定時性は高い。但し運行の効率性や乗客の利便性は必ずしも高くないと感じる。八幡平市内の公共交通はその市域、仮に多くが居住する南部の西根と松尾地域に限定しても、広さに対して極めて希薄であると言わざるを得ない。少子化に伴い通学での公共交通の利用も減少する中で、路線バス、コミバス、鉄道共に、日常的かつ任意の移動の手段として利用する事は極めて厳しい状況かもしれない。冬季の利便性等の原因は兎も角、現状では公共交通機関には依存せず移動する車社会となっている。今後、車の運転が困難な高齢者は確実に増加するし、運転能力に個人差はあるが高齢者の運転には危険が伴う。これに対応するため、また地域振興として観光を考える場合に、社会としてどのような交通手段を準備するのか、今後の公共交通の在り方を含め、早急に検討する必要がある。八幡平市では「八幡平市地域公共交通網形成計画」を策定し、問題点の整理と解決の方向性を探っている。
 その中で特に地域の中心的医療機関である西根病院の大更駅前への移転とそれに伴う駅周辺の再開発に期待を寄せている。現在の市役所は北森駅に隣接しており、大更駅に病院を隣接させることは花輪線の利便性維持または向上に期待する所もあると考える。一方、主要な商業施設とその他の生活必需機能等は車社会を反映して国道または県道沿いにあるが、主要国道(282号)と花輪線は近接して併走しており、西根病院の駅前移転は花輪線のみならず自動車を利用した医療提供の利便性を向上させうるであろう。今後の基幹となる公共交通機関として何を期待するのか明確にする必要がある。また自ら運転が困難で公共交通機関が利用できない情況や時間帯も当然ありうる。それを考慮すると「従来型の公共交通機関」以外のより効率的な選択肢を新たに創造することも十分に考慮に値するのではないだろうか。

「八幡平市地域公共交通網形成計画」では観光振興に期待している。外国人旅行者を含めて車を持たない観光客を期待する場合、その生活嗜好や現在の観光や旅行、余暇の過ごし方は多様化していることに留意する必要がある。豊かな自然と温泉だけでは他のより首都圏に近い観光地と同じである。八幡平や安比高原を他とどう差別化して際立たせるか、そのためにはどのような施設やサービスが利用提供可能で、今後何を際立たせることが必要なのか、どの世代にどのような利用を訴えるのか、明確にした戦略が必要であろう。余裕のある都市退職者層を期待するのであれば、その嗜好に対応しつつ、既存の資源を可能な限り利活用することが前提であろう。
オークフィールド周辺に限った場合、周辺の居住者の公共交通機関は、通勤通学、買い物等の目的や、大更駅や盛岡までの目的地にかかわらず、県北バスの一時間毎の路線バスが担う。運行本数が限られ時間を要するが、コミバスも運行している。客観的には市内の他の地域に比べると格段に恵まれている。しかし、公共交通機関が発達した都市からの居住者(移住者)には現状では利便性が高いとは思えず、現実的な生活手段として公共交通機関に期待することは困難と言わざるを得ない。また、地域での生活も路線バスやコミバスへの依存度は高くない。例えば東八幡平病院への通院もバス停から観察する限り車が主である。オークフィールド入居者の主要な生活用の交通手段も施設が所有する車が主である。
 八幡平市は冬季の積雪もありDoor to Doorを可能にする車移動が浸透しきっている中で、今後の地域の更なる高齢化に対応するため公共交通機関を模索している。公共交通機関の発達した都会からの移住者・訪問者はその利便性の低さから改善を求めている。それに対応し現在のコミバスの運行の効率化やタクシーのオンデマンド方式のコミュニティ交通としての利用等、幾つかの改善策は呈示されている。その実現は急務ではあるが、現状は資源の老朽化や財源確保等、現在の公共交通機関の充実は極めて厳しい状況と言わざるを得ない。今後は地域の需要、即ち誰がどのような目的で移動するのかを明確にし、その需要を最優先し地域に在る資源と無い資源を明確にして対応する必要がある。少なくとも地域の中には私用公用を含めて多くの車とそれを運転できる人材がおり、現実的にそれに依存して社会は成立している。その資源を活用する方策もあるのではないか。
 従来型の公共交通機関の限界は明らかである。従来型公共交通に依存しない住民共助の交通手段の組織化やビジネスモデル等を模索創造すること、それを可能とする規制の緩和、また地域社会も従来の習慣や伝統に拘らない姿勢も必要ではないだろうか。もしくはさらに一歩進めて移動や交通を最小限に留める生活等の思い切った発想の転換も必要であろう。

以上

杏林CCRC研究所
蒲生忍

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