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あなただけじゃない!本当は多い女性の排尿トラブル 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催

市民公開講演会

あなただけじゃない!本当は多い女性の排尿トラブル

日時:平成28年12月24日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:三鷹キャンパス大学院講堂

講師:金城真実(杏林大学医学部泌尿器科学教室 医員)

   奴田原紀久雄(杏林大学医学部泌尿器科学教室 教授)


講演概要
 ”女性にとって泌尿器科は特に受診しにくい科とされています。でも排尿の問題は決してまれではなく、困っているのにも関わらずどこにも相談が出来ずひとりで悩みを抱えている人が少なくありません。多くの排尿トラブルは生命に影響を及ぼすことは少ないですが、生活の質(QOL: Quality of Life)を低下させます。 女性に多い排尿のトラブルを女性泌尿器科専門の女性医師がわかりやすく解説し、少しでも解決できるようアドバイスいたします。”

講演会風景

講演会風景

金城真実先生

金城真実先生


 12月24日の午後、杏林大学三鷹キャンパス大学院講堂を会場に公開講演会「あなただけじゃない!本当は多い女性の排尿トラブル」が開催され、地域の住民等約130名が参加された。奴田原教授のイントロダクションに続いて、金城医師が講演と質疑応答を行った。金城真実医師は杏林大学医学部の出身で、医学部付属病院泌尿器科での研修、医学部大学院修了後、2002年に助手、2006年より非常勤講師、2015年より医員として活躍されている。
 排尿に関する有病率は全ての年代で男性よりも女性の方が多いにもかかわらず、医療機関の受診率は男性が圧倒的に多い。女性が受診しやすい診療科として女性泌尿器科または骨盤底外来の重要性が示唆され、杏林大学においても2015年から泌尿器科内に女性骨盤底専門外来を開設した。金城医師は泌尿器科の専門医・指導医としてこの女性専門外来を担当されている。本講演では女性の泌尿器、排尿障害について丁寧に解説された。

 高齢女性の尿失禁、頻尿等の排尿トラブルは骨盤底の障害に起因することが多い。骨盤底障害とは女性に特有で,骨盤の靭帯、結合組織、筋肉の脆弱化や損傷による排尿トラブルに加えて、排便障害、骨盤臓器脱等の女性にとりあらゆる不快な症状を引き起こす疾患である。経膣分娩が最大の危険因子で、肥満、喫煙、喘息等咳をする状態や重量物運搬等の腹圧のかかる状態等も一因となる。尿失禁の罹患率は40-59歳女性のほぼ半数との報告もあり、高頻度が示唆されるが正確な頻度は明らかではない。これは、日常の適切な運動や骨盤底筋体操で予防でき、また投薬や手術により治療可能にも関わらず羞恥心等より受診に至らない潜在患者が多く存在することによると推測される。また、排尿トラブルから、生活活動が制限され社会活動の放棄に至り、女性のQOLを大きく障害する可能性も指摘されている。金城先生は排尿トラブル、骨盤臓器脱、間質性膀胱炎等の原因と種類、また骨盤底筋体操や薬物による治療、さらに手術による治療等について丁寧に解説した。
 男女ともに排尿トラブルはそれ自体は生命予後に直接の影響を与えず、今までは「疾患」との認識は与えられていなかった。しかし、近年では加齢に伴い出現しQOLを損ない、場合によってはさらに重篤な状態に至る可能性を持ち、「QOL疾患」という概念で捉えられている。治療可能性がある場合でもその重要性は医療提供者を含めて十分な理解を得られていない。今後の超高齢社会では健康で活発な女性高齢者が社会維持の鍵となる。女性が排尿トラブルを含めたQOL疾患に関して躊躇せず受診できる医療環境と機会を提供すること、積極的かつ適切な時期の適切な治療を促すことが、超高齢社会の維持、健康寿命維持に寄与できるのではないだろうか。

杏林CCRC研究所
蒲生忍