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女性のトイレトラブル 自分でできる対策と予防 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学・三鷹ネットワーク大学 共催
市民公開講演会

女性のトイレトラブル 自分でできる対策と予防

日時:平成29年6月3日(土)午後1時30分〜午後3時

場所:杏林大学病院 大学院講堂(第2病棟4階)

講師:金城 真実(杏林大学医学部泌尿器科教室 医員)

金城真実先生

金城真実先生

講演概要
 ”女性にとって泌尿器科は受診しにくい科の代表です。でも女性の排尿トラブルは決してまれではなく、困っているのにも関わらずどこにも相談が出来ずひとりで悩みを抱えている人が少なくありません。多くの排尿トラブルは生命に影響を及ぼすことは少ないですが、生活の質(QOL: Quality of Life)をとても低下させます。 外出や趣味をあきらめていませんか?女性に多い排尿トラブルを女性泌尿器科専門の女性医師がわかりやすく解説し、少しでも解決できるようアドバイスいたします。ぜひ快適な生活を取り戻しましょう”

 6月3日の午後、杏林大学三鷹キャンパス大学院講堂を会場に公開講演会「女性のトイレトラブル 自分でできる対策と予防」が開催され、地域の住民等約85名が参加された。金城真実先生は杏林大学医学部の出身で、医学部付属病院泌尿器科での研修、医学部大学院修了後、2002年に助手、2006年より非常勤講師等を経て、現在、本学付属病院で泌尿器科女性骨盤底専門外来を担当し活躍されている。本講演では女性の骨盤底疾患と女性に多い膀胱炎について丁寧に解説された。

 女性の骨盤の中にある膀胱、子宮、直腸などは、「骨盤底」といわれるハンモック状の筋肉や靱帯によって支えられている。この骨盤底の脆弱化や損傷により、女性にとりあらゆる不快な症状を引き起こす疾患が骨盤底疾患と呼ばれる。腹圧性尿失禁、過活動膀胱、骨盤臓器脱、などを含み、経膣分娩が最大の危険因子で、加齢に加え、肥満、喫煙、喘息等咳をする状態や重量物運搬等の腹圧のかかる状態等も一因となる。
 尿失禁の罹患率は40-59歳女性のほぼ半数との報告もあり、高頻度が示唆される。尿失禁にも幾つかのタイプがあり、咳やくしゃみをした時や重いものを持った時等のお腹に力がかかったときに尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁と、水仕事をしている時など尿意切迫感と同時または直後に漏れてしまう切迫性尿失禁(過活動膀胱に含まれる)、そしてその両方の病態をあわせ持つ混合性尿失禁が多い。腹圧性は骨盤底筋が弱くなり尿道をしっかり支えられないのが主な原因で、骨盤底筋体操で予防・治療できる。一方、過活動膀胱は、主に膀胱の過敏性が増し勝手に収縮してしまうことが原因と考えられる。尿道の閉める力をつける骨盤底筋体操も有効であるが、膀胱の異常収縮を抑えたり膀胱の筋肉を緩める薬物による治療が通常は非常に有効である。

 骨盤臓器脱とは骨盤内の臓器が骨盤底筋の脆弱化等により本来の位置から下垂し膣外に出てきてしまう疾患である。手術により根治可能であるが、その他にも生活指導としてなるべく腹圧をかけないようにすること(たとえば減量、便秘の改善、重いものを持たない、きつい下着をはかないなど)や骨盤底筋体操、ペッサリーによる保存的治療も有効である。

 尿失禁や骨盤臓器脱は「決してまれな病気ではなく」原因に対応した体操、投薬、手術等の適切な治療により治癒可能にも関わらず、「恥ずかしがったり、どこに相談したら良いかわからず人知れず悩み」受診に至らない潜在患者が多く存在すると推測される。これらの疾患により生活が制限され社会活動の放棄に至り、女性のQOLを著しく低下させることも指摘されている。金城先生は、女性に特有の疾患について同性として率直に悩みの相談に応じること、状態と希望に応じて保存治療、薬物治療、手術治療を提示し丁寧に説明することを心掛けているとし、「まずは病気を知り、そして治療方法を理解して、快適な生活を手に入れましょう」と講演を締めくくった。

 近年、加齢に伴い出現しQOLを損ない場合によってはさらに重篤な状態に至る可能性を持つ「QOL疾患」という概念が提唱されている。尿失禁は女性の代表的なQOL疾患であり、その治療について理解し積極的に取組むことが今後の超高齢社会維持の鍵となることを知る講演会であった。

 限られた時間の中、熱心にご聴講いただいた市民の方々、またご講演のみならず多くのご質問に丁寧に回答いただいた金城先生に感謝します。

杏林CCRC研究所
蒲生忍