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認知症を理解するために 講演会報告

杏林大学「地(知)の拠点整備」事業
杏林大学 共催

市民公開講演会

認知症を理解するために

日時:平成29年11月2日(木)午後2時〜午後4時

場所:羽村市生涯学習センターゆとろぎ 小ホール

講師:長谷川 浩(杏林大学医学部高齢医学教室 准教授)


講演概要
 ”2025年には認知症が700万人、その一歩手前の軽度認知機能障害が700万人を超えると言われており、65歳以上の高齢者のうち、5人に2人が認知症か軽度認知障害になると考えられています。このため、認知症について知ることは重要です。どのような病気があるのか、どのような症状が出るのか、困ったときにどこに相談すればよいのかなどを皆さんと話し合えればと思います。地域でどのように認知症に対応していけばよいのかを皆さんと一緒に考えましょう。”

長谷川浩先生

長谷川浩先生

講演会風景

講演会風景

 11月2日木曜日の午後2時より、羽村市生涯学習センターゆとろぎ 小ホールを会場に公開講演会「認知症を理解するために」が開催され、羽村市の住民の方を中心に66名が参加された。講師の長谷川浩先生は千葉大学医学部の出身で、慶應義塾大学医学部老年科学助手、北里研究所病院内科医員、米国Wake Forest University Section of Cardiology Research Fellowなどを経て、2003年杏林大学医学部高齢医学教室に助手として着任された。その後、講師等を経て2013年より准教授として医学部での認知症、高齢者救急、老年循環器学に関する研究のみならず、付属病院高齢診療科・もの忘れセンターでの臨床にも老年学会・内科学会・認知症学会等の指導医・専門医として活躍されている。

 認知症とは「脳や身体の病気により、記憶や判断力等の障害がおこり、通常の社会生活がおくれなくなった状態」である。今回の講演会の会場となった羽村市は56千人が暮らす都下で最も人口が少ない市で、高齢化率は25%で全国平均の27.3%を下回るが都平均の22.7%を上回る。これに基づき長谷川先生は、羽村市の認知症患者は2100名超、「正常」と「認知症」の間と言われる軽度認知機能障害Mild Cognitive Impairment (MCI)もほぼ同数で合計約4000人と推定し、早期の対応と予防の重要性を指摘した。認知症の予防には早期発見が何よりも重要である。早期発見には各種の認知機能テストに加えCTやMRIによる頭部の画像検査が鍵となるので機会を捉えて画像検査を受けておくことが役に立つ。また、認知症にはアルツハイマー型やレビー小体型のみならず多くの種類がある。「治る認知症」を発見し、また適切な治療薬の服用で「進行を遅らせること」、「将来を予測し準備すること」が重要とのことである。

 長谷川先生はMCIや認知症との重複や発症リスクの上昇が指摘されているフレイルという概念について言及した。フレイルは加齢に伴い生理的予備能が低下し脆弱性が高まり生活機能低下、要介護状態や死亡等の転帰に陥りやすい状態をいい近年多くの分野で重要性が指摘されている。フレイルを予防することが認知症の予防にも効果的で共通性があるとされる。

 限られた時間の中、様々の種類の認知症の解説と予防まで、示唆に富む講演であった。さらに長谷川先生は本学と周辺地域での地域包括ケアの経験に基づき、大学病院でも既に受診者の高齢化が顕著に進行していること、今後に予想される都市での超高齢社会での認知症への対応に、大学病院、かかりつけ医、介護施設、リハビリ施設、地域社会、行政等々を含む多職種が連携してサポートすることが必須であることを付け加えた。

 長谷川先生の精力的かつ丁寧な講演に感謝します。また蒼天晴明の下、多数ご参集いただき熱心にご聴講いただいた市民の方々に主催者の一員として感謝します。

杏林CCRC研究所
蒲生忍