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近隣のコミュニティセンターで公開講演会を実施。

 1月18日(木)井の頭コミュニティセンターで広島大学名誉教授・筑間正泰先生をお招きして「日本近代を造った偉人たちと刑法典第2編『罪』第27章『傷害の罪』について」の講演会を開催した。当該講演会は杏林大学 地(知)の拠点整備事業の一環として行われた。以下、講演会の概要について記す。なお、第一部は「日本近代を造った偉人たちと教養の定義」の話であり、第二部は「法典と刑法典第2編『罪』第27章『傷害の罪』」の話であった。
 第一部の概要は、以下のとおりである。イギリスの小説家であったサンセット=モームは、「教養とはその人に真善美がいかに宿ったかをいう」と作品の中で述べていた。この定義は基本的に正しいが、講演者は神仏ないしはsomething greatに対する崇敬の念を抱く気持ちも重要なのではないか?との問題提起をされ、「教養とは真善美聖(しょう)がその人にいかに宿るかをいう」とサンセット=モームの教養の定義づけの修正を試みた(なお、講演者と交流のある清水寺の貫主である森清範和尚も「真善美(聖)」が大切であると述べておられるそうである)。また、教養人たる者は、他者へ貢献する姿勢が大事であり(明治学院大学の建学の精神は、Do for othersである)、具体的には日本近代の発展に寄与したヘボン博士(明治学院大学の創立者である)、ドイツから来日したシーボルト博士、シーボルトの娘のイネ氏(日本で初めての産婦人科医)、イネ氏を尊王攘夷の動乱から匿った大村益次郎氏、津田三蔵を死刑から救い司法権の独立を墨守した児島惟謙氏の生き方から学ぶべきだとの話をされた(公共に奉仕する姿勢は善の実践につながるとの話もされた)。ちなみに、講演者は、岸田劉生の絵を鑑賞したり、古田織部400回忌で歌を披露するなどして教養の獲得のため、日々修練しているとの話題提供もなされた。
 第2部では、傷害罪、傷害致死罪、同時傷害の特例、暴行罪等の犯罪類型の解説がなされ、条文に「傷害」と規定されている時は、狭義の傷害と広義の傷害の場合とがあることが明らかにされていた(現場助勢罪に登場する「傷害」の文言は後者の意味である)。また、講演者は法典の定義が存在しないことを指摘し、法典につき「ある範囲の法規を組織的に配列・編纂したもの」をいうと定義づけるのが正しいと結論づけた。 
なお、特筆すべきことであるが、休憩時間中、そして講演会実施後に、井の頭コミュニティセンターで活動している井の頭ハーモニー(指導をしているのは、静岡県輝くかけがわ応援大使である声楽家の加納ケンジ氏)との交流が図られ(偶々、1月18日に同じ会場を使用していることか実現した)、参加者全員で、ヘボン博士やイネ氏が活躍していた明治時代を偲んで、滝廉太郎の「花」等の歌が歌えたことも、地域交流という観点からは、大きな収穫であったように思う。

2018.2.16
総合政策学部 特任教授 大山徹