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第2回 高校と大学をつなぐFD/SDを開催

 平成27年9月16日、杏林大学八王子キャンパスにおいて「第2回 高校と大学をつなぐFD/SD」が開催されました。テーマは「高校での外国語教育についての現状と課題」です。稲垣大輔高大接続推進室長の司会で、坂本ロビン外国語学部長の挨拶から始まりました。
 第一部の講演では、まず、神奈川県立神奈川総合高等学校の菅原喜一教諭から、「高等学校における英語教育の現状 −コミュニケーション英語に求められる英語力を高大接続の中でどう育ててゆくか−」と題して講演をいただきました。次に、関東国際高等学校の黒澤眞爾副校長から、「高等学校における多様な外国語教育の現状と課題 −中国語教育を中心として−」と題して講演をいただきました。また、中国語教員として白井聖大教諭も参加されました。

 菅原先生の講演では、学習指導要領における“コミュニケーション英語Ⅰ”が求めている英語力の定義として、「4技能の統合的な活動が行われるようにし、それに適した題材や内容を英語をツールとして扱う」ことと述べられました。つまりHow(英語による発話)とWhat(英語で扱う内容)の両輪で、ディスカッションやアクティブラーニングを取り入れる授業です。そのためには、生徒が話す機会が7割で教員が話すのは3割にしていくことが必要ということです。具体的には、生徒を二人以上のグループに分け英語で討論させたり、1分ペーパーを書かせたり、ディベートを行うなどの方法があります。
 菅原先生は100%、英語で授業を行っており、主人公である生徒が英語で発話しやすいように、Why、Howを中心とする良い質問を教師がしてゆくこと、また、生徒の発話が不十分でも、一つのWordを拾いそこから会話を発展させてゆくことが大切と述べられました。
 実際の授業の中で行われていることとして、新出単語の紹介をまず行い、その後、内容理解のためには、本文を読ませ、ペアでYes/No questionで問答させ、疑問詞を使った質問に発展させ、本文から何を学んだのかを話させ、本文の一部の要約を書かせ、本文をパラフレーズさせる、といったことをしているとのことです。
 高大接続に関しては、高校教員も大学教員もそれぞれがどのような授業をしているかを知らないので、相互の授業見学や高校・大学が連携した教材づくり、高校教員向け研修の大学による提供、大学生による高校でのインターン(教員の補助)や高校英語合宿等での補助、などを提案されました。

坂本外国語学部長の挨拶

坂本外国語学部長の挨拶

菅原先生の講演

菅原先生の講演

黒澤先生の講演

黒澤先生の講演

 黒澤先生の講演では、学習指導要領における外国語の扱いは英語のみが表記され、その他の言語は具体的な表記がない、という話で始まりました。東京オリンピックに向け英語以外の外国語学習(中・仏・独・韓・西・露・伊)の充実も東京都として謳われていますが、高校の現場では大学受験につながらないため実施する高校はほとんどないということです。
 高校生はおよそ300万人いますが、そのうち中国語を学習している生徒はおよそ3万人で、高校数では517校です。韓国語・朝鮮語は333校、フランス語は223校、スペイン語は109校、ドイツ語は107校だそうです。ただ中国語の週当たりの単位数は2~3単位がほとんどで、授業時間の少なさ、生徒への意識づけ(受験がない)、中国語コミュニケーションの環境づくりなどの課題があるそうです。具体的に、第二外国語教育に力を入れている沖縄県や北海道、埼玉県、神奈川県の高等学校の実情も紹介されました。  
 そうした中、関東国際高等学校では、週に5単位から10単位の中国語の授業を受けられます。生徒の声として、高校卒業後も中国語を学習したいという生徒は学年が上がるにつれ増加しているそうです。また、将来、中国の大学への留学や中国語を使う仕事につきたい、という生徒の割合も大きいとのことです。
 諸外国に比べ、英語以外の外国語教育の制度が弱い日本で、「外国語(中国語)を学びたいという意欲ある生徒を受ける仕組みづくり」が重要だとし、「中国と良きライバルとなるための人材づくり」が大切であると締めくくりました。

意見交換 1

意見交換 1

意見交換 2

意見交換 2

高校教員へ質問

高校教員へ質問

 第2部のディスカッションでは、30分時間を延長して、高校教員と大学教員の質疑応答が活発に展開されました。

Q. 大学で外国文化を100人規模のクラスで教えている。飽きたりする学生が多いが、高校ではどのようにしているか?
A.サブカルチャーから入り、「こうしたことは他の高校では教えないよ」と生徒をくすぐることから始めている。また、例えば「日本文学では夏目漱石が有名だが、中国の高校生が誰でも知っている作家は誰でしょう?」と話を向け、中国作家への生徒の興味を喚起している。
100人規模でもアクティブラーニングでいくつかのグループに分け、input(教員)とoutput(学生)をセットで扱う授業をするとよい。Youtubeを教材とすることで生徒の興味や関心を引く。しかし、高校生はSNSで外国人とも交流しあらゆる情報を得ているので、文化に関してはメディアリテラシーを教えるのが重要である。

Q.関東国際高等学校の中国語カリキュラムは非常に充実しているので感動したが、独自カリキュラムか?教材選定の基準は?他校のカリキュラムとの関係は?
A。独自カリキュラムである。選定基準は「同世代交流ができるような内容の教材」としている。他校のカリキュラムとの協調は単位数が違うので難しい。中国語の大学入試が高校のカリキュラムを意識していないという問題もある。

Q.中国語を学ぶ学生が減ってきている原因は?
A.日中関係のムードの悪化である。しかし中国は危なそうだからという保護者を説得して学ぶ意欲的な生徒も中にはいる。

Q.アクティブラーニングで、やる気のある学生とない学生の差が大きく、授業に困ることがあるがどう対応しているか?
A.グループのメンバーを入れ替えている。

Q.ALL Englishの授業で、不得意な生徒への配慮は?
A.ペアやグループのメンバーを誰とにするかで配慮している。
 中国語では、初学者と既修者(中国人系)との組み合わせは試行錯誤している。
 高校では、アクティブラーニングでも教員がヘゲモニーをとり、教員への信頼感を生徒に与えている。

Q. 大学教員の教育上の悩みは?
議論:帰国子女や外国人系の生徒は、「日本人は空気を読むことがうまく見習いたい」という。私自身(教員)が帰国子女で日本の文化になじめなかったが、空気を読むという文化にはグローバル性があるか?最近の日本人学生は日本が最高に幸せと感じている割合が高いが、外国の価値観(たとえば発展途上国)をどう教えればよいか?

・なぜ外国語を学ぶかについて生徒と考える必要がある。受験目的のみなら外国語を学ぶ意義は少ない。空気を読むソフトパワーと説明文化のバランスが重要。

・「空気を読む」の裏返しはいじめであり、適切な言葉使いや配慮が重要である。
・韓国語を勇気をもって恥ずかしがらずに話した生徒は、相手からリスペクトされた。そうした経験自体(自信)が外国語、特に英語以外の言葉を学ぶ意義であると考えている。

予定時間を30分も延長してのディスカッションを終え、非常に有益なFD/SDは幕を閉じました。

                             
地域交流課(高大接続推進担当)
2015. 9.17