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医学部衛生学公衆衛生学教室の谷口善仁教授が順天高等学校の生徒にフィリピンでの手洗い歌について指導

平成27年9月、順天高等学校(SGH)からの依頼で谷口善仁教授が、フィリピンで活動を行う高校生に「手洗い歌」の普及について、直接、高校生からのメールに対してアドバイスを行いました。
それをもとに、高校生らは実際にフィリピンでフィールドワークを行いました。
そこに至るまでの学習過程を、順天高等学校の新江梨佳先生がまとめましたので、以下に報告します。


スーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定されている順天高等学校では、フィリピンをフィールドとした課題研究やフィールドワークを含めた学習活動に取り組んでいます。

その一つとして、公衆衛生をテーマとして探究活動を行ってきた生徒達が、フィリピンの子ども達に向けた手洗い歌の普及活動を企画しました。
フィリピンの事を調べる中で、「子どもの感染症が多い」というデータを目にしたところから、正しい手洗いの方法を覚えやすい歌を通して普及させ、感染症対策につなげたい、という考えに至りました。

自分たちの力でフィリピンの衛生事情や公衆衛生の知識を学びながら企画を進めていく中で、企画内容について「公衆衛生学の専門家の方に相談をしたい」という考えを持ち、杏林大学の谷口善仁先生に相談させていただきました。


大学の先生にメールで連絡をする、ということもほぼ初めての体験となり緊張しているようでしたが、早々に返信をいただき、自分たちの考えに対して丁寧に回答をいただけたことに大変感激していました。
高校生が読んで理解できるよう噛み砕かれた内容で書いていただいたものを読み、一つ一つ納得をしたり悩んだりしながら、企画に取り入れようとしていました。


手洗いの大切さを伝える事前講座は、谷口先生にいただいたように、劇のような演出要素を取り入れたものになりました。
本人達も考えていた方向性でもあり、先生の後押しをいただけたことで、より自信をもって進めることができたようです。

また、「顕微鏡でばい菌を見せる」という事例を知り、「ぜひ自分たちもやってみたい」という意見が挙がりましたが、あいにく器具の手配が難しかったため、学校の養護の先生に協力してもらって手のひらのばい菌の写真を用意し、子ども達に見せることにしました。


衛生に対する意識の調査やワークショップの効果を測るアンケートの方法や問いの内容については、本人達も苦戦していた部分でもあり、「漠然としている」「質問の意図は何だろうか」というご指摘に納得をしながら、さらに頭を悩ませつつ改善案を考える努力をしていました。
生徒なりの解として、多くの対象者に聞く問いには、選択肢を増やして具体的にするなどの工夫をし、回答者のうち少数の人にやや踏み込んでインタビューを重ねることでより細かい情報を聞き出すことなどを追加で考えていました。


こうしてブラッシュアップした企画を携えて、9月下旬から10月上旬にかけて、フィリピンを訪れ、実際にフィリピンの村の子供達に向けて手洗いワークショップを実践しました。
集まったのは4,5歳から12,3歳くらいの子ども達30名ほど。
地元の高校生の協力も得つつ、英語とタガログ語を用いて、手洗いに関する事前講座、タガログ語での歌の指導、実際に皆で石鹸を使って歌を歌いながら手洗い、という流れで20分ほどのワークショップを実施しました。

大勢の子ども達がとても賑やかで、慌ただしく進行してしまい、じっくり歌を教えることやアンケートをとることができなかった反省点もあったようでしたが、ワークショップ内で多くの子ども達が楽しそうに手を洗っていたり、その後も歌を口ずさんでいたりするのを見て、自分たちの企画が形となったことに安堵と嬉しさを感じている様子でした。

(谷口先生を含め、周りの方々の協力も得て進めてきていることから、自分たち自身にプレッシャーも少し課していたようです。)


また、「せっかくのフィールドワークだと思うので、ぜひその場を見てもらえれば。家庭などに行ってみて実際に洗っているところを見るのが一番の調査。」と谷口先生にいただいていたように、フィリピンの様々な地域で手洗いの習慣や病気について尋ねたり、実際に水道まわりや手洗いの仕方を見せてもらったりしていました。

それらを通じて、「手洗いの大切さ自体は認識されている」「石鹸も使うと言っている」「でも実際は十分に洗えているとは言い難かった」「手洗いが対策となる病気以外も多いよう」など、想像していたこともそうでなかったことも含めて様々な情報を現場から得てきました。


ワークショップで一定の好感触も得た一方で、現地で見聞きした様々な事情や状況を踏まえて改めて考え、「手洗いを普及することの必要性がそもそもあるのかどうか」という根本の問いも含めて、課題を持ち帰ってきました。
現在は、今回の一連の活動を通じて知ったことや考えを整理し、論文執筆を試みています。

高大接続推進室  
2015.10.27