平成30年11月19日 夕刻より 第13回杏林APラウンドテーブルが杏林大学 井の頭キャンパスで行われました。参加高校は15高校から22人の校長、副校長、進路指導担当教諭らが参加しました。 参加高校は、大成高等学校、関東国際高等学校、聖徳学園高等学校、順天高等学校、都立三鷹中等教育学校、都立青梅総合高等学校、都立武蔵村山高等学校、日出学園高等学校、都立羽村高等学校、藤村女子高等学校、都立調布南高等学校、都立府中東高等学校、都立杉並総合高等学校、神奈川県立横浜清陵高等学校、工学院大学附属高等学校でした。
まず、大瀧純一学長の挨拶ではじまり、その中で、小中高の教育が変わってゆく中で大学がどのように変われるかが問われているのが高大接続や入試改革だとの認識を述べました。
稲垣大輔高大接続推進室長から、今年度に既に実施してきたアドバンストプレイスメント(夏季集中科目等を含む)やFD/SD、英語キャンプ、中国語研修、英語プレゼンコンテスト、ライティングセミナーなどの報告がありました。Jason Somerville特任講師からはライティングセンターの活動報告が行われました。 さらに、今後のIELTS対策講座(2月)や日英中トライリンガルキャンプ(3月)のお知らせや、来年度のアドバンストプレイスメントの予定などのお知らせが続きました。
その後、意見交換に入り、今回は、高大接続・入試改革に対する高校側の対応について、15校からその状況を伺いました。杏林大学としても非常に役立ったとともに、他の高校の取り組みを知るうえで、高校間の情報交換にも寄与できました。
高校別の状況報告は省きますが、全体として下記のような取り組みや課題があるそうです。
・英語4技能の強化や、英検、TEAP、GTEC、ケンブリッジ英検、TOIEC、IELTSなどの受検を課している。ケンブリッジ・イングリッシュ・スクールの認定を日本で初めて取り、英語で授業をしており、教員の開発にもなっている。一方、各種英語検定試験の面接対策を塾がすでに始めているようで、みな、同じような面接回答が返ってくる場合がある。
CAN DO LISTを作成している。東大が英語でCEFRのA2を基準としたことが、他大学にも波及するだろう。
・国語は記述式の授業を展開している。記述力は読解力に比例するので、その強化を目指している。ただし、記述式の採点の難しさを教員が実感している。
・ポートフォリオ対応として、多くの高校でClassiを導入または検討している。その他のアプリで行っている高校もある。導入していても生徒の取り組みは今一つで、教員の負担が増えている。まだ、紙媒体や生徒手帳にその機能をもたせている高校もある。
・アクティブラーニングを積極的に行い、50分授業の内、教員が話をするのは20分以下にしようと試みている。ルーブリックで達成度を見ている。
・2020入試改革への対応より、新学習指導要領の研究・研修を学校全体として行おうとしているが、教員間の温度差がある。学力観が変わる中で、どのような人材を育ててゆくのか、という根本を教員が共有してゆくことが重要である。
・探究的学習や課題研究については、総合高校のほうに実績があるが、杏林大学を含め大学での実験などを活用している。ただ、若い教員の中には、自身の卒論経験がない人もいて、指導が困難になる場合もある。
・調査書やポートフォリオの入試での大学側の活用の方針が良く見えないのは、問題である。
・共通テストを受ける一般入試より、現在の指定校推薦、公募推薦、AOで受験する生徒が多いので、多様な進路選択をする生徒に対して、入試改革に対応するのが大変である。入試改革については1年生とその保護者に周知して意識づけを行っている。
この他にも多様なお話が出ましたが、各高校とも先取りをしながら高大接続・入試改革に対応している状況を、参加者全員で共有することができました。
その後、神谷茂保健学部長から早稲田大学の政経学部における「共通テスト+英語検定試験+数学必須」についての質問があり、「受験生が東大レベルの併願なので文系でも数学必須にできる」との意見が高校からありました。
高校側から、「大学のアドミッションポリシーが出てこないのが問題で、アドミッションオフィサーを置く個別の良い生徒を探してゆく入試に、日本はまだなる気配がない」との指摘がありました。 これに対し大瀧学長は、アドミッションポリシーは既にどの大学でも出しているが短い。杏林大学では数年前から「長い文章」で書いており、状況に応じて修正もしている、と答えました。
またアドミッションオフィサーを置くには、今までのすべての大学の入試の在り方が、それに対応できる仕組みになっていない。つまり、教員が試験作成・採点を行い、事務方はそれにかかわっていない。杏林大学では今年から事務方も入れている。 1万人を超える受験生のすべてにきめ細かく対応するのは不可能で、やはり1次試験合格者への対応となる。
さらに大瀧学長は、大学はどう変わるべきか?については、とにかく時代・社会の変化のスピードが速くなってきた。例えば10年かかるといわれた自動車の自動運転も、もう2-3年でかなりのレベルでできそうである。文系も理系のこうした成果を利用していく仕事に就く。また、文科省もグローバルから地域にテーマをシフトしており、その対応も必要だ。こうした中で、卒業時の就職=つまり4年間の変化を見据えた方向性を出してゆくのは難しいことである、と述べました。
最後にスノードン国際交流センター長の挨拶で、予定時刻を30分も超え白熱した杏林APラウンドテーブルが閉会しました。
高大接続推進室
2018.11.20