Vol.9 近頃の若者は・・・

大学で教えていると言うと、最近の若い人はどうですか、と聞かれる。取材の人から、仕事で会う人から、講演会に来ているお客さんから、尋ねられる。言葉遣いがひどい、礼儀を知らない、常識がない、本を読まない、総じて頼りない、困ったことだ、ということを、私に言わせたいことが、ありありとわかる顔をしている。それで、なかなかいいですよ、僕は大好きですが、と言うと、意外そうな顔をされる。

最近の若い者は、という文句を並べるのは、大昔からあったことだ。それが事実ではなかったことも、歴史が証明している。しかし、そのことを彼らは知らないのか、あるいはすっかり忘れてしまっているのか、ひょっとすると、今の若者は史上稀に見るダメな若者であるというのか。性懲りも無く、若い人の悪口を言う。呆れてしまう。

何とかいう国際学力テストがあって、世界での順位が落ちたから、日本の若者の質が落ちた、と彼らは本気で思っているらしい。当の若者の中にもそのように思って自信をなくしている人がいるという。どうせユトリですから、などとひがむらしい。とんでもないことだ。

時代が新しくなるにつれて、人の能力は確実に向上する。スポーツの新記録が毎年更新されていくのをみれば明らかだ。今の若者たちは、私たちが若かった頃よりも確実に賢くなっている。認めたくないけれど、彼らの方が秀れている。

昔の人に比べて、今の人の教養程度が落ちているように感じられることはある。しかし、それは、比較の仕方を間違えている。古い時代の賢い人と、今の時代の凡人を比べても意味はない。今の時代に記憶されている昔の人は、恐ろしく賢い人たちなのだ。その人たちと比べるべきは、今の時代の賢い人たちなのだ。私たちは普通の人間であり、つまらない愚か者なのだ。昔も私たちのような愚か者はいただろうけれど、その人たちのことは忘れ去られてしまっている。比べようがない。

これからの時代を作ってくれる人たちは、私の世代よりも広い知識を持ち、十分に思慮深く、のびのびと自身を成長させていくに違いない。それを私たち教師が信じないで、一体誰が信じるだろうか。彼らに未来を託するのが、私たちの義務であるのだ。

どうか裏切らないで欲しいとおもう。

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