Vol.15 「じ」の法則

「じ」の法則というのをご存じだろうか。東京都心から西へ行く。「じ」のつく駅を通るたびに、気温が0.5度変化するというのだ。内陸に向かっていくので、夏であれば暑くなっていくし、冬であれば寒くなっていく。新宿を出ると最初に、こうえん「じ」を過ぎる。0.5度変わる。きちじょう「じ」で1度、こくぶん「じ」で1.5度、はちおう「じ」で2度変わる。科学的に立証されているとは思えないが、気分的にはとても納得できる。

この四月、いよいよ移転する。都心と2度も違う八王子から、1度しか違わない吉祥寺近辺へ移る。八王子も悪くなかったけれど、夏の暑さはうんざりさせられた。特に問題だったのは冬の雪。周辺の道がほとんど通行困難になり、交通機関がストップする。かろうじて近くまで行けても、坂の上にあるから、バスが登れなくなる。この季節、八王子キャンパスの者は、都心より2度も冷える「じ」の法則を恨めしく思うのだ。

今年は暖冬とかで穏やかだったけれど、年明け間もなく、やはり白い悪魔がやってきた。キャンパスは全面休講し、授業内試験を予定していた科目は、時間のやりくりに苦心させられた。

しかし、授業であれば、補講できる。学年末試験も、影響が及ぶのは学校の中だけのことだから、繰り延べできる。困るのは入学試験である。地方からくる受験生は、宿泊の手配をまたしなくてはいけない。なんとしてでも、入試の日だけは、坂道にバスが通ってくれなければならない。それで、若手入試実施委員は、前の晩に坂の下にある宿舎に泊りこむことになる。雪が降ったときのための、雪掻き要員である。

私もかつて、若手だったころ、何回か前泊した。寝台がひどくきしむ。なぜかと言えば、あれは病院のベッドのお古であるからで、これを使っていた患者さんたちの声なのだ、などと、まことしやかな怪談が語られるのだった。

井の頭に移っても雪は降るし、それで支障をきたすこともあるだろうけれど、「じ」の法則は、あまり意識しないで済むことになるにちがいない。

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