医学部医学科4年 金子拓矢さん
抗菌薬が効かない多剤耐性菌感染症は増加の一途を辿り、新たな治療薬が開発されなければ2050年には耐性菌による死亡者数は年間1000万人に達すると試算(O’ Neil, 2016)されています。本学では、特定の細菌だけに感染して破壊する「バクテリオファージ」というウイルスを用いて、多剤耐性菌症の治療法の開発をめざす研究が進められています。金子拓矢さんは、研究を進める「杏林ファージチーム」の一員として活動しています。
抗菌薬が効かない多剤耐性菌感染症は増加の一途を辿り、新たな治療薬が開発されなければ2050年には耐性菌による死亡者数は年間1000万人に達すると試算(O’ Neil, 2016)されています。本学では、特定の細菌だけに感染して破壊する「バクテリオファージ」というウイルスを用いて、多剤耐性菌症の治療法の開発をめざす研究が進められています。金子拓矢さんは、研究を進める「杏林ファージチーム」の一員として活動しています。
もともと実験や研究に興味があった金子さんは、2年生の時に総合医療学教室の松田剛明教授、花輪智子教授のもとで研究支援員として研究の手伝いをはじめました。正確なデータを得るためには丁寧に実験データをとることが大切なことから、金子さんはまず実験に使う器具の洗浄やピペットの扱い方など実験の基礎を習ったのち、研究に必要な細菌の培養を開始しました。
金子さんは、授業の合間や長期休暇に研究室を訪れ、試料の観察やデータ入力などをしています。
研究は、同じ作業の繰り返しや地道にコツコツと取り組むことが多いですが、実験の過程で困難な問題に遭遇した時、先生方が問題解決までの道を示してくれます。丁寧な実験をしているにも関わらず、はっきりとした結果が得られない時、別のアプローチ方法を探るため論文を読むことを提案されました。金子さんは図書館やインターネットで苦労しながら様々な論文を読み、それらをもとにして、培養時間や試料の量を変えるなどして工夫したところ、うまくデータをとることができました。
「教科書で習う病気の治療法や検査法は、研究や実験、そして、たくさんの人の協力があり存在していることも研究を通して改めて感じました」と金子さんは話します。
右:金子さんが担当している研究についてまとめたポスター
いま金子さんは、大腸菌とその分泌物から成るバイオフィルムに対して、ファージがどのように作用するか調べています。
バイオフィルムの観察は、授業では触れることのない高性能な顕微鏡で行います。「バイオフィルムの構造は多様で、立体的な3次元構造をしているのがわかります。細かく観察していくと、バイオフィルムにはいろいろな表情があり、“こんな顔してる!”と愛着も沸いたりします(笑)。先の長い研究ですが、抗菌薬に代わる多剤耐性菌感染症の治療薬の開発を目指して、研究チームの先生方と頑張っていきたい」と意気込みを語ってくれました。
金子さんは、1年生の時から法医学研究室に通い、法医解剖の見学をさせてもらっています。その理由は、法医学における死因の究明は社会的な意義が大きく、医師として必要な知識だからと言います。「杏林大学には、私が目標とする『臨床と研究を両立する医師』もたくさんいて、やりたいことを応援してくれる研究室があります。こうした環境を自身の成長につなげたい」と、いまの気持ちを語ってくれました。
※記事および各人の所属等は取材当時のものです