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10/3“膵臓がん克服を目指して”治療最前線をテーマに市民公開講座を開催

 増加傾向にある膵臓がんの啓発イベントとして10月3日、パープルリボン・セミナー「膵臓がん市民公開講座」が三鷹キャンパス大学院講堂で開かれ、約150人の患者・家族や市民、医療関係者が専門医らの語る膵臓がん治療の最前線に熱心に耳を傾けました。
 膵臓がんは年々増加傾向にあり国内の年間死亡者数は3万人を超えるとされていますが、早期発見が困難で予後も悪く、医療の現場では今、治癒につながる有効な治療法の模索とともに生存期間を延長する化学療法や、生存率・QOL(クオリティー・オブ・ライフ)を改善する複数の治療法を組み合わせた集学的治療などの研究がすすめられています。

 この膵臓がんについては、乳がんのピンクリボン運動と同じように「パープル」を象徴カラーとして、膵臓がん患者支援団体の特定非営利法人パンキャンジャパンが全国各地で医療機関と連携して啓発・撲滅にむけて活動を展開しています。
 この日のセミナーは、同団体と当院が地元三鷹市や日本医師会などの後援を得て共同で開催したもので、東京では5回目の開催となります。
 会場の大学院講堂には遠くは福岡などからも医療関係者をはじめ患者さんや患者ご家族、市民ら約150人が参加し、始めにこの分野の権威である本学の跡見裕学長が挨拶し、「私が医師になった時は膵臓は暗黒の臓器と言われていました。まだ残念ながら歩みはゆっくりですが画像診断は普及し化学療法も進歩し、少しずつだが治療の対象になってきました」と今後の治療の進展に期待を寄せました。またパンキャンジャパンの眞島喜幸理事長は妹さんを膵臓がんで亡くし、自らも家族性膵臓がんで膵臓を摘出したことに触れながら、アメリカに倣って日本で法人を立ち上げたことを説明し、「欧米で使われる治療薬が日本では5年以上たって初めて導入されるなど、いわゆるドラッグラグ問題がまだ続いている」とリボン活動推進への決意を語り協力を求めました。

 続いて「膵臓がん治療の最前線」をテーマに4つの基調講演が行われ、本学医学部消化器内科の土岐真朗助教は「早期発見」をテーマに、早期の膵臓がんは症状が出にくいだけに患者サイドからも膵がんを念頭に医師に相談することの大切さを指摘するとともに、超音波検査やCT、MRI、超音波内視鏡など各種診断技術の特徴と現状を紹介しました。消化器・一般外科の鈴木裕講師は「外科手術の最前線」の紹介の中で、術前・術後の化学療法と合わせた集学的治療の重要性を強調するとともに安全な手術を受けるには慣れた施設で受けることを勧めました。

 内科学腫瘍内科の岡野尚弘助教は「化学療法の最前線」をテーマに、2.000年にゲムシタビンと呼ばれる抗がん剤が出た後10年の空白があったが近年新たな抗がん剤が相次いで登場し化学療法は目覚ましく進歩し、腫瘍が縮小して手術が可能となる例が出てきたことなどを紹介し、付属病院の川名典子看護師長は「がんと心のケア」をテーマにストレスの対処方法などについてわかりやすく講演しました。

 このあと講師をパネリストに「膵臓がん克服を目指して」と題してフロアなどからの質問に答えるパネルディスカッションが行われました。「家族性膵がんが心配だ」「膵臓に出来た嚢胞は放っておいてもよいか」「術後半年間S-1の抗がん剤を服用したが1年間服用した方がいいのではないか」「父が余命半年と言われ、抗がん剤が効かなくなり緩和ケアを勧められたがどうしたらよいか」など、質問が相次ぎました。これに対しパネリストがそれぞれの立場から「家族性膵がんは、近親者に患者が多いとそれだけリスクが増す。その他糖尿病の急な発症や増悪への注意も必要だ。医師に検査を申し入れるといい」、「大きな嚢胞は手術をしたほうが良い。半年に1度は検査を受けることを勧めます」、「S−1の服用は半年で効果が証明されており、副作用もあるので半年が妥当だ」、「痛みは取り除くことが必要だ、患者が元気なうちに緩和医療に関する情報を収集しておくことを勧めます」などと一つひとつの質問に丁寧に答えていました。

 最後に、座長を務めた本学医学部内科学腫瘍内科の古瀬純司教授が挨拶し、「膵臓がんは世界共通の辛いがんだが、日本が柱となって世界を引っ張っていきたい」と力強く決意を述べました。そして閉会にあたり、本学医学部消化器・一般外科の杉山政則教授が「膵臓がん治療の最前線では診断・治療が着実に進展しており、患者さんたちとともに膵臓がん克服に向けて闘っていきたい」と宣言し、この日のセミナーを締めくくりました。

がん患者の絵画や写真、メッセージの展示に見入る来場者

がん患者の絵画や写真、メッセージの展示に見入る来場者

パープルリボン活動グッズを求める来場者

パープルリボン活動グッズを求める来場者

 パープルリボン活動については来る11月1日(土)午前9時から、疾患の啓発とともに膵臓がん研究者の支援のためのチャリティー(参加費3.000円、当日参加3.500円)として、江東区の木場公園イベント広場で3.5㎞と7㎞のコースを走ったり歩いたりする「木場公園ウォーク&ラン」のイベントが行われることになっています。

患者さん、家族の皆さんと膵がん撲滅に向けて決意を新たに

患者さん、家族の皆さんと膵がん撲滅に向けて決意を新たに


2015.10.5