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【ご報告】1月11日 国際医療協力講演会が開催されました。

 1月11日(水)、第8回国際医療協力講演会が、三鷹キャンパスの看護医学教育研究棟101室で開催されました。今回は、Dr. Myo Nyein Aungを講師としてお招きしました。Myo先生はミャンマー出身の医師で、タイのマヒドン大学で熱帯医学の修士号を取得され、現在はタイ国ランパン県にある保健省立の看護専門学校(Boromrajonai College of Nursing)で研究員として活躍をされています。講演のテーマは、“Highest burdened infectious diseases in developing countries(途上国において最も負担の大きな感染症)”で、マラリア、B型肝炎、結核、HIVについて、Myo先生達がタイとミャンマーの国境地域で収集したデータと様々な文献からの知見を交えながら、お話をしてくださいました。以下、講義の概要です。

 【マラリア】マラリアは、古くからある熱帯病です。世界人口の約半分がマラリアに感染するリスクがある地域に住んでおり、年間の患者数は約2億人、死亡数は100万人に及びます。マラリアによる死亡の85%は5歳未満の子どもです。マラリアの感染経路は、マラリア原虫に感染しているハマダラカという蚊に刺されることと、マラリアに感染した血液の輸血を受けることです。タイとミャンマーの国境地域は、熱帯雨林に覆われており、複数の種類のハマダラカが生息し、住んでいる人の多くは避難民で、家屋も状況も良くないことから、マラリアの発症件数が多い地域の一つです。
 マラリアへの感染を予防するには、ハマダラカに刺されないようにすることが重要で、最近は殺虫剤を練り込んだ蚊帳を使用することが推奨されていますが、その普及率はあまり高くありません。また、感染者を早く正確に診断し、抗マラリア薬を服用させることも重要です。近年、マラリアによる死亡数は低下しつつありますが、感染者数には変化がありません。地球温暖化や貧困などマラリア制圧をする上で困難な点もありますが、マラリアワクチンの開発、地球温暖化や貧困への対応など、マラリアの感染予防を進めていくためのより良い方法を考える必要があります。

 【B型肝炎】B型肝炎ウイルスの感染により発症する病気です。世界人口の3分の1が感染していて、毎年100万人が死亡していると推計されています。特に東南アジアでは感染者の割合が高く、2000年の感染者の割合は、ミャンマー12%、タイ10%でした。感染経路は、母子感染、性行為、輸血、針刺し事故、輸血、針の使い回しなどですが、流行国では母子感染による感染が多いです。母子感染の場合、慢性化することが多く、肝がんの発生につながる危険性も高いです。B型肝炎の治療が肝がん発症の予防になりますが、多くの途上国では検査と治療薬が高額であることなどから、全ての人が十分な治療を受けられるわけではありません。一方、B型肝炎の感染予防には予防接種が重要です。東南アジアでは予防接種を受ける子どもの数も年々増えおり、子ども達のB型肝炎ウイルス感染割合は低下しています。

【結核】結核も古くからの病気で、今日でも世界の死因の上位を占めています。世界人口の3分の1が感染し、年間約100万人が死亡していると推計されています。結核菌の感染経路は飛沫感染であるため、病院、集会、換気が十分ではない家屋等、せまい空間に多くの人が集まるところは感染リスクが高くなります。結核の感染予防策は、結核治療とBCG接種です。前者には、患者の発見とDOTS(直接監視下短期化学療法)による治療、潜在的結核感染者の治療が含まれます。結核菌に感染してもすぐに発症するわけではありませんが、HIVへの感染が結核を発症しやすくするだけではなく、結核による死亡のリスクを高くしています。そのため、HIV感染者に、早めの抗HIV多剤併用療法を提供することも結核を予防する上で重要です。また、多剤耐性結核や広範囲薬剤耐性結核への対応も結核対策における重要な課題です。

【HIV/AIDS】国連エイズ合同計画(UNAIDS)によると、世界で2010年にHIVと共に生きる人は3400万人、新規感染者が270万人、死亡は180万人と推計されています。HIVとともに生きる人々の数は緩やかに増加していますが、死亡数は減少傾向にあります。タイにおけるHIVと共に生きる人々は約50万人、ミャンマーでは24万人と推計されています。HIVの主な感染経路は性行為、針の共有、母子感染、輸血ですが、2009年の新規感染者の多くは性行為によって感染していました。エイズが報告されてから30年が経過しましたが、その間、原因ウイルスが特定され、抗HIV多剤併用療法が開発されるなど、先進国ではHIV/AIDSは慢性疾患の一つと認識されるようになりました。途上国においても抗HIV多剤併用療法の利用者が増加していますが、先進国に比べ死亡率が高く、AIDSに関連した疾病の管理も含めた医療の質を向上させていく必要があります。また、UNAIDSが昨年掲げた「新規HIV感染、HIV/AIDS対する偏見、AIDS関連疾患よる死亡をなくす」という展望を現実のものにするためにも、更なる研究を積み重ねていく必要があります。

前列の左から3人目がMyo先生

前列の左から3人目がMyo先生


 講演会には学内外から20人を超える人が出席し、活発な質疑が行われました。国際医療協力の現場で活躍できる人材育成を目標としている国際医療協力専攻にふさわしい内容の講演で、たくさんの知的な刺激を受けることができました。

杏林大学大学院国際協力研究科 教授 北島 勉




これまでの講演会の概要についてはこちらをご覧ください。

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