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【ご報告】4月9日 国際医療協力講演会が開催されました。

 4月9日(月)、第9回国際医療協力講演会が、三鷹キャンパスの看護医学教育研究棟101室で開催されました。今回は、Dr. Kuwadee Rojpaisarnkitを講師としてお招きしました。Kunwadee先生は看護師として勤務されたあと、タイのチュラロンコーン大学で看護学修士を、マヒドン大学で公衆衛生学博士を取得され、現在はタイ国チャチェンサオ県にある国立ラチャパット・ラチャナカリド大学(Rajabhat Rajanagarindra University)の副学長を務めておられます。また、同大学の公衆衛生学修士課程の責任者として、主に地域で保健医療サービスを提供している職員の育成にも尽力されています。

 講演のテーマは、“Health Tambon Project: A case study of Chachoengsao Province, Thailand(ヘルシータンボンプロジェクト:タイ国チャチェンサオ県の事例)”で、チャチェンサオ県の特徴と同県で行われている健康な地域づくり活動の状況と、そこで実践されている“Share and Learn across Area(SLA、地域間で共有し学ぶこと)についてお話をしていただきました。以下、講義の概要です。


【チャチェンサオ県について】
 チャチェンサオ県は、タイの中部に位置します。県の西部では米作が盛んで、東部は丘陵地が広がっています。人口は約60万人です。タイの行政区分は、国 − 県(Province)− 郡(District) − タンボン(Sub-district) − 村(village)となっています。タンボンの人口は1000〜3000人で、タンボン行政組織(Tambon Administration Organization)がタンボン内の生活環境の整備や行政サービスの提供を行っています。

【ヘルシータンボンプロジェクトについて】
 ヘルシータンボンプロジェクトは、タイ健康基金(Thai Health Foundation)の助成によるアクションリサーチプロジェクト(実践を伴う研究活動)で、チャチェンサオ県にある93タンボンのうち、27カ所を対象として実施しています。このプロジェクトでは、タンボンの行政組織、住民、学校の先生、保健センターの職員、自主グループ、大学の研究者など、様々な人やグループ間の協力関係を活性化し、健康な地域づくりを進めていくことを目指しています。特に、様々な人々による協働を通して、みなが地域づくりを「共有」できるようにすることを大事にしています。

 プロジェクトでは、自分たちが住んでいる地域の実情を知り、問題を発見し、その改善のための計画をつくり、対策を実施し、その評価を行い更なる改善を目指すという流れで進んでいます。その過程において、SLA(地域間で共有し学ぶこと)により、健康な地域づくりを進めるためのノウハウの共有に努めてきました。SLAでは、他のタンボンで成果を上げている活動があれば、その活動そのものだけではなく、活動が成果を上げることができた背景や活動の進め方などについての情報共有を促進したり、地域の人々の経験に基づく「暗黙の知」を体系化し、他の地域の人々も活用できるようにするといったことも行っています。SLAを行っていく上で大事なのは、とにかく関係者と話をする、地域の人々が話をすることができるようにエンパワーするということです。

 このプロジェクトでは「健康」を広く捉えており、保健医療分野以外の職員や研究者も参加し、人々の健康に直接的・間接的に関係する学際的な活動が展開されています。この2年間で、ヘルシータンボンを進めていくための賛同者の増加、地域における竹林の保全活動、地域福祉基金の創設、子供や若者のヘルスボランティアグループの育成、農産物の商品価値の向上などの成果が出て来ています。
 今後は、SLAを進め、ヘルシータンボンに関する知識を持つ人を増やし、ヘルシーな県をつくる活動に発展させていきたいと考えています。

          前列の右から3人目がKunwadee先生

前列の右から3人目がKunwadee先生

 講演会には学内外から15人前後が出席し、活発な質疑が行われました。最後に、本学国際協力研究科の野山修教授から、「タイで実践されている、分野が異なる専門家や地域住民が共同して地域づくりを行うという方法は、東日本大震災の被災地における地域づくりのあり方を考える上で良いヒントになるのではないか」というまとめの言葉とKunwadee先生への謝辞が述べられ、大きな拍手とともに講演会は終了しました。

杏林大学大学院国際協力研究科 教授 北島 勉



■これまでの講演会の概要についてはこちらをご覧ください。

2012.04.11