第12回国際医療協力講演会「保健分野におけるMDGsの進捗とJICAの取組み」が開催されました。
10月30日に三鷹キャンパスの看護医学教育研究棟101室において、第12回国際医療協力講演会が開催されました。今回は、国際協力機構(JICA)人間開発部保健第三課の牧本小枝課長をお招きして、保健分野におけるMDGsの進捗状況やアジア地域におけるJICAの母子保健事業についてお話を伺いました。
【講演の概要】
2001年に国連総会でミレニアム開発目標(Millennium Development Goals、MDGs)が採択されました。MDGsは、2015年までに達成すべき8つの目標からなっていますが、そのうち目標4と5が母子保健、目標6が感染症対策に関するものです。目標4と5に関しては、5歳未満児死亡率や妊産婦死亡率は、全般的には1990年の値と比べてほぼ半減していますが、アフリカサハラ以南と南アジア地域の状況改善が課題となっています。目標6については、HIV/AIDS、結核、マラリアは、2000年頃と比べると新規感染者や死亡者は減少していますが、ここでもアフリカサハラ以南や南アジアにいるサービスがまだ十分に行き届いていない貧困層、少数民族、農村部の人々への対応が課題となっています。
MDGsの達成に向けて、JICAとしては各目標について、世界全体の戦略策定や人材育成、日本の経験の共有や国を超えた地域的な支援の展開など、グローバルレベルの取り組みや、各国の事情に応じたカントリーレベルどの取り組みを行っています。2013年にJICAは保健分野の協力に関するポジションペーパーを出しました。JICAは、「人間の安全保障」の理念に基づき、開発途上国で、最も必要としている人々に必要な保健医療サービスが負担可能な費用で届く体制づくり(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)を目指しています。母子保健や感染症対策は重点課題と位置づけられており、それらを含めた保健分野の課題を解決していくためには被援助国の保健システムの構築や強化への協力が重要であると考えられています。
母子保健分野に関する具体的な取り組み事例として、国の戦略を具体的なサービスとして提供し、アクセスを改善するために、利用可能なローカルリソースを活用する体制を作ったバングラデシュ母子保護強化プロジェクト、カンボジアの助産能力強化を通じた母子保健改善プロジェクト、フィリピンのコーディレラ地域保健システム強化プロジェクトについてお話をしていただきました。
講演会には、学内外から約10名が参加しました。講演の後、各プロジェクトを進めて行く上で困難であった点やJICAの役割など、様々な角度から活発な質疑応答がありました。主催者からの謝辞のあと、大きな拍手とともに講演会は終了しました。
今回の講演会では、JICAの保健分野における取り組みと、具体例として母子保健関連のプロジェクトやそれらが行われた国や地域の様子を聞くことができ、大変有意義な2時間でした。国際医療協力専攻ではこのように国際医療協力の現場で活躍している方々からお話を聞く機会をこれからも設けて行きたいと思います。
杏林大学大学院国際協力研究科
教授 北島 勉
2014.11.3
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