杏林大学はポートランド州立大学とMOUを締結しています。相互の交流を深化させるうえで、研究における相互交流が一つのきっかけになると考えており、総合政策学部三浦秀之准教授がポートランド州立大学と共同で実施する本フィールドワークの企画運営に携わっています。
ポートランド州立大学のあるオレゴン州では、近い将来、オレゴン州において大震災が起こることが予測されると、2015年に発表された米国連邦政府による報告書に記載されました。これを受けてポートランド州立大学に災害とコミュニティに特化した研究所が設置され、震災を含む災害に関する興味・関心が高まっています。このことから2017年度より杏林大学とポートランド州立大学では、東日本大震災の教訓を学ぶためのプログラムとして訪日フィールドワークを実施しています。このフィールドワークは ”Learn From Each Other” を理念に掲げ、日本とポートランドが災害に備えるまちづくりを共に学び合うことを目的としています。
6月24日~26日、28日の行程でポートランド州立大学の西芝雅美行政学部学部長・教授、伊藤宏之経済学部学部長・教授の引率のもと、11名の学生等が来日し、「防災に強いまちづくり」をテーマにフィールドワークが実施されました。前半の3日間は宮城県石巻市を訪問し、旧大川小学校など被災した施設や住宅地、また、石巻魚市場、防災集団移転地、津波の際の避難場所などを見学しました。石巻市役所復興政策課の岡浩課長と七宮義幸主査にコーディネートいただき、市場関係者、地域住民などから説明を受け、東日本大震災や復旧・復興状況を学ぶ機会となりました。調査最終日は、首都直下型地震に備える都市部と首都圏近郊の企業や住宅の防災対策について学ぶため、東京都大手町に所在する三菱地所株式会社、三菱地所レジデンス株式会社、千葉県習志野市津田沼に所在するマンションを訪問し、それぞれの防災に関する取組の説明や建物、周辺施設の見学が行われました。三菱地所レジデンス株式会社では代表取締役の脇英美社長からご挨拶を頂戴し、また社員の方々に被災地の復興支援で商品化された缶詰を用いたランチをご用意いただきました。また、津田沼においては、新たに立ち上がった自主防災組織についてのご説明をいただくだけでなく、防災活動に取り組んでいるマンションに住む方のお部屋を開放していただき、災害備蓄品や家具の転倒防止対策などを見学させていただき、日頃から防災に対する関心が高いことを認識することができました。災害マネジメントや対策に関心のあるポートランド州立大学の学生達は、多くの質問を投げかけ、経験者からの回答に熱心に耳を傾けていました。
このプログラムには総合政策学部の学生達がポートランド州立大学の学生をサポートする役割で同行していました。学生達はこれから留学する予定の者も含め総合政策学部が提供する専門科目やグローバルに活躍するための知識を英語で学ぶ学生達で、見学や説明の際に傍らに寄り添い、話し相手になりながら実りあるプログラムになるよう努めていました。参加した学生達からは「外国の方々と長時間行動を共にし、会話とコミュニケーションの勉強になった」「防災について現地見学や説明を受けることがこれまでなかったので、非常によい体験となった」などの感想がありました。
◆参加者感想文◆
久保哲 総合政策学部2年(GCPに参加、9月からオーストラリアに留学)
今回、アメリカのポートランド州立大学と被災地で共同で実施するフィールドワークに参加して、大きく分けて2つ学んだ。まず1つ目は防災についてである。私たちは宮城県石巻市の被災地、防災センター、大川小学校、また被災された地元の人の話を聞くなど普段あまり体験できない経験をした。実際に現地に行き驚いたことは被災地であった場所が8年の復興過程を経て、全く新しい町に生まれ変わっていた事である。そこは津波が来たことが信じられないくらいきれいなまちができていた。しかし、決して忘れてはいけない2011年3月11日の出来事、あの日がそのまま残されていたのが大川小学校であった。一目見てその被害の大きさが目に飛び込んできた。言葉にできない光景に津波の恐ろしさをただ痛感した。8年という長い年月が経ち忘れてきている人もいるだろう、地元の人々にはいたたまれない場所ではあるが、あの日を忘れないために大川小学校をあのまま残すということがとても重要であると心から感じた場所であった。またいつ起こるか分からない災害に向けての取り組みとして防波堤、防潮堤に加え高盛土道路により津波を止めるのではなく津波の勢いを減らす対策を行っていた。そして住民への取り組みとして自然災害である津波には誰も勝つ事ができない、だから「とにかく逃げる」ということ「命ある事が重要である」ということを呼びかけていた。2つ目に本フィールド調査を通じて学んだことは、外国人とのコミュニケーションについてである。今回の企画により私は「積極性」というのがどれほど重要であるかということを思い知らされた。たとえ英語を話せなくとも、分からなくとも、自分が自ら行動に移さなければ何も起こらないという事を強く感じた。今後、留学をする立場として今回得た教訓を留学先で実践しなければと強く思った次第である。
被災地のフィールド調査によって得た被災地の現状、どのように復興したのか、被災者の思い、さらなる災害に向けての対策、そして2011年3月11日を決して忘れてはならないということを全ての人に共有する事がこれから先、大切であると感じた調査であった。
地域総合研究所、データサイエンス教育研究センター 講師 橋本晃生
データサイエンス教育研究センター センター長、教授 坪下幸寛
2024年6月17日
保健学部理学療法学科 教授 石井 博之(Ishii Hiroyuki)
保健学部理学療法学科 助教 相原 圭太(Keita Aihara)
保健学部健康福祉学科 准教授 大久 朋子(Tomoko Ohisa)
保健学部健康福祉学科 准教授 朝野 聡(Satoshi Asano)
保健学部看護学科看護養護教育学専攻 教授 太田 ひろみ(Hiromi Ohta)
保健学部看護学科看護養護教育学専攻 助教 楠田 美奈(Mina Kusuda)
2020年7月9日