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にんにくを科学する

保健学部
岡田 洋二教授
(2018年9月取材)

杏林大学保健学部学卒業、大学院保健学研究科博士前期課程修了。保健学博士。天然由来抗酸化物質の探索及び反応機構に関する研究などを行う。日本酸化ストレス学会、日本食品化学会、日本機能性食品学会所属。2018年より杏林大学入学センター長

杏林大学保健学部学卒業、大学院保健学研究科博士前期課程修了。保健学博士。天然由来抗酸化物質の探索及び反応機構に関する研究などを行う。日本酸化ストレス学会、日本食品化学会、日本機能性食品学会所属。2018年より杏林大学入学センター長

にんにく研究のはじまり

人間が生命を維持するためには呼吸と酸化は必要不可欠な反応ですが、取り込んだ酸素は不適切な生活習慣などで“ 活性酸素” に変化することがあります。この活性酸素は酸化力が非常に強いので、体内で過剰に活性酸素が生成すると老化を早めたり、がんや動脈硬化の原因にもなったりします。活性酸素による酸化を防ぐ物質のことを抗酸化物質といいますが、代表的なものにイソフラボンやカテキンなどがあります。
私は加工されていない成分(天然由来物質)の抗酸化機構解明研究を行っています。にんにくについての論文を調べていると、抗酸化機構の解明が進んでいないことに気づき、アリシンの抗酸化機構に関する論文を初めて世に出しました。

医薬品としての“にんにく”

にんにくの臭いの主成分はアリシンで、この成分はにんにくが傷つかないと生成しません。にんにくは切るなどして細胞が潰れると、細胞成分のアリインがにんにくに含まれる酵素と混ざり、アリシンに変化します。にんにくは外敵から身を守ろうとして刺激臭のアリシンを生成するのですが、そのアリシンには殺菌効果もあったのです。
昔からにんにくが医薬品として注目されたのは必然だったのです。現在では、このアリシンに降圧作用や抗高脂血症作用などの効用が認められ、様々な分野で研究が行われています。

臭いと戦いながら研究

実験のために多くのアリシンを用意しなければなりませんが、さほど安定した化合物ではないため、にんにくをすりおろして保管しておいても、アリシンはすぐに分解してしまうのです。そのため、実験用のアリシンを確保するのに苦労しました。
毎日、毎日にんにくを擦っていると、あの独特の臭いが体に染みつきます。「お父さん臭い!」と家族から敬遠されたりもしました。また、研究室のドアを開けたまま実験をしていたら、保健学部の校舎中に臭いが充満。他の研究室の先生から苦言を受けたこともありました。

論文発表 深まる“アリシン”の研究

2006 年にアリシンの抗酸化機構についての論文「Kinetic and mechanistic studies of allicin as an antioxidant. 」をイギリスの学術雑誌『Organic & Biomolecular Chemistry 』に発表しました。この論文に多くの研究者が関心を寄せ、中でもK.U.インゴルド博士(1952 年に王国ロイヤルメダルを受賞したイギリスの著名な化学者C.K. インゴルド博士の息子)は、私の提唱した抗酸化機構に修正を加えた論文を影響度の高いドイツの英文学術雑誌『Angewandte Chemie International Edition 』に発表しました。
それを受けて私は、彼の論文の確認実験を別の手段を用いて実施し、この春に論文として発表したところです。基礎研究はすぐに成果が見えるものではありませんがイノベーションの源と言われています。これからもアリシンの研究がさらに深まることを楽しみにしています。

※記事および各人の所属等は取材当時のものです

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