「今の自分は、大学入学当時とは別人というくらい新しくなった感覚です」と自分の成長を実感している黒田さんは、大学での学びや留学などの経験を経て、卒業後は大学院で中国外交などの研究を行う予定です。
転機は2年次での1年間留学だと話します。
「中国の外国語大学の中で最難関の1つと言われる、北京外国語大学へ留学したい」と、協定校のある杏林大学へ入学した黒田さんは、そのチャンスを得て、2年次で1年間の留学をしました。
留学中は、レベル別クラスで毎日多くの課題をこなしながら勉強づけの日々を過ごしました。「最初の2週間はクラスのレベルについていけず、半分泣きながら必死に授業についていった」と話します。その甲斐もあり、留学から半年で、中国語検定HSKで、ビジネスで要求される最高レベルの6級を取得するほどに語学力が上達しました。
また、世界各地の留学生と共に学んだことも貴重な経験となりました。紛争問題を抱えた学生の出身国を誤ったことで相手を怒らせた時に、初めて宗教や国家間の対立問題を意識することができました。「自分がいかに世界知らずか気づかされ、恥かしかったです。そこから、国際問題への関心が高まり、勉強を始めました」と振り返ります。
大学で中国語を専攻しようと思った理由は、自身のルーツにあります。母は中国出身でしたが、黒田さんは話せなかったことから、「祖父母など親戚達と中国語でコミュニケーションが取れるようになりたい。そして将来は、母のような通訳者になれたら」と目標を持つようになりました。
杏林大学には、日中通訳の第一人者と言われる教授が教鞭をとっていた歴史があり、現在も通訳者として活躍する教員がいることも入学を決めた理由だと話します。
3年次からは、通訳者としても活躍する張 弘教授のゼミに所属し、ゼミ長として学生たちをまとめながらディベートやスピーチ大会の企画運営をするなど、積極的にゼミ活動を行いました。また、張教授からは「通訳を行う上で、相手の文化や政治的背景などの知識を幅広く持つことが大切」だと、自身の体験談を交えながらアドバイスを受けたことも、大学院への進学を決意する後押しとなりました。
2022年の春からは、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で中国の政治や国際関係について学びを深めていきます。
黒田さんは、「中国は幼いころから慣れ親しんだ故郷でもありますが、政治的な側面など理解しきれていないところがあります。多様性があり複雑な中国について、大学院で理解を深め、将来は通訳者として日本と中国をつなぐ役割を担いたいです」と抱負を語っています。
※記事および各人の所属等は取材当時のものです