本学医学部病理学教室 里見介史学内講師が、日本病理学会 学術研究賞を受賞し、11月17日・18日に盛岡で開かれた第68回日本病理学会秋期特別総会で学術研究賞演説(A演説)を行いました。
日本病理学会は約110年前に設立され歴史ある学会で、「病理学に関する学理及びその応用についての研究の振興とその普及を図る」という伝統の下、時代の変化に即した様々な活動を行っています。学術研究賞(A演説)は、病理学領域における特定の課題について優れており、かつ蓄積した研究業績を挙げていると判断された会員に授与されるものです。
里見学内講師は、「中枢神経系腫瘍のゲノム・エピゲノム研究と病理診断への応⽤」に関する研究で本賞を受賞しました。これは、国内の多施設共同研究によって集積された中枢神経系腫瘍の臨床検体を用いて、分子遺伝学的解析およびDNAメチル化解析を応用することで、真のIDH野生型低悪性度星細胞腫の存在を示唆し、分類学上の問題点の解明に寄与したものです。また、中枢神経系胚細胞性腫瘍の新しい分子遺伝学的マーカーとして12p gainを同定し、生命予後の予測が可能であることを示しました。
病理学教室 柴原純二教授は、「形態学的所見に基づく病理学研究に、ゲノム・エピゲノムの視点を取り組んだ新しい取り組みである。今後のさらなる詳細な検討により、病態生理の解明や病理診断への応用の可能性を明らかにしてもらいたい」と述べています。
里見学内講師は、「このような素晴らしい賞をいただき光栄です。多施設共同研究に加わったすべての方々に感謝を申し上げます。また、研究を支えて下さっている教室関係者の皆様に心より御礼申し上げます。今後も、データ駆動型病理学とも言うべき新しい病理学研究の形を提示していければと思います」とコメントしています。