本学医学部肉眼解剖学教室 長瀬美樹教授と東京工業大学生命理工学院 生命理工学系 中村信大准教授等の研究チームは、
受容体タンパク質の一種である「ADGRF5」が、腎臓で尿を作るために必要な血液ろ過フィルター(糸球体ろ過障壁)を維持し、働き続けるために必要であることを突き止めました。
腎臓は、血中の老廃物や塩分をろ過して尿として排泄することで全身の体液の組成を一定に保つ役割を持ちます。血液ろ過は腎臓の糸球体と呼ばれる毛細血管の壁を通して行われますが、この壁には血中の細胞やタンパク質を通過させない特殊なフィルター構造が備わっています。多くの腎疾患の要因として血液ろ過フィルターの異常が挙げられますが、フィルター構造が正常に働くよう維持する機構には謎が多く残されていました。
本研究では、ADGRF5が血液ろ過フィルターを構成する糸球体内皮細胞に存在することを明らかにしました。
また、ADGRF5を欠損させたマウスでは、血液ろ過フィルターの構造が壊れて尿中にアルブミン(血中タンパク質の一種)が漏出し、腎機能が低下していることを発見しました。さらに、ADGRF5が糸球体内皮細胞における遺伝子の働きを調節していることも明らかにしました。
この成果は、血液ろ過フィルター異常による腎疾患の発症メカニズム解明に寄与することが期待されます。
本研究成果は、2024年6月6日付の米国腎臓学会学術誌「Journal of the American Society of Nephrology」電子版に掲載されました。
Scientists revealed the role of endothelial cell receptor in maintaining the integrity of the glomerular filtration barrier.
The absence of Adhesion G-protein-coupled receptor F5 (ADGRF5) led to significant changes in gene expression in glomerular endothelial cells, disrupting the structure and function of the glomerular filtration barrier, as discovered by researchers from Tokyo Tech and Kyorin University. Their study, employing genetic knockout and knockdown techniques in mice and human cells,
elucidates ADGRF5's crucial role in barrier maintenance and proposes potential therapeutic approaches for glomerular diseases.