温泉気分と海の幸を商品化
地域の観光資源に触れながら、心身のリフレッシュや健康の増進を図ろうというウェルネスツーリズム。保健学部と外国語学部が教育・研究と社会貢献の両面の有用性に着目した「杏林型ウェルネスツーリズムプロジェクト」が始まっています。
杏林大学は、2021年12月、東伊豆町と包括連携協定を結び、温泉を軸にしたウェルネスツーリズムの構築を進めています。活動の中心となっている外国語学部観光交流文化学科の小堀貴亮教授のゼミでは、去年の10月に産官学の連携で温泉の源泉と金目鯛など地域の特産品をセットにした商品「東伊豆版温泉WAKUWAKU」を開発しました。
自宅にいながら東伊豆を旅している気分を味わうことができる温泉旅行体験ギフトです。この事業で、ゼミの学生はセットに加える特産品を選んだり、パッケージのデザインをしたり、また商品をPRするポスターを作ったりしました。商品の売れ行きは好調で、事業に関わった会社のパルクムとGEKI、そして東伊豆町役場からも、学生たちの取り組みに対して高い評価をいただきました。
身も心も癒す観光ツアーを提言
今、ゼミ生が取り組んでいるのが「ウェルネス」を意識した観光スポットをめぐる着地型観光ツアーの企画です。東伊豆町は日本有数の温泉観光地ですが、近年のコロナ禍において観光業界は大打撃を受けました。そんな東伊豆町を元気にしようと、学生たちはあらゆる世代の方に町を訪れてほしいという地元のリクエストに応えた企画を考えました。
例えば、『東伊豆の歴史文化をめぐり、足湯で癒すウェルネスツアー』は、坂道が多い東伊豆の地形を活かしつつ、町内の歴史文化資源をめぐる、シニアの女性を対象にした健康ツアーです。「お湯かけ弁財天」や熱川温泉発見伝説を示す「太田道灌の碑」などの史跡をめぐりながら、温泉卵を食べたり、土地にちなんだクイズを解いたりとレクリエーションの要素を取り入れ、「湯らっくす公園」の足湯をゴールとして疲れを癒すといったツアーです。
また、若い女性を対象に考案した『大自然と旬のフルーツを満喫するビューティーツアー』は、動物園や遊園地があるレジャーランドでウォーキングを楽しみ、そのあと「章姫」や「紅ほっぺ」など、町を代表するイチゴが食べ放題のイチゴ狩りやミカン狩りでビタミンCをたっぷり補給するといった、女性にうれしいツアーになっています。まだ学生たちによる発案段階ですが、これらのツアーがいつか東伊豆町で実現できるよう、町役場観光商工課への提案に向けてさらに企画を練っています。
「保健」×「観光」の連携によるバリアフリー調査を実施!
さらに学生たちは観光振興に大きく影響するバリアフリーの調査も行いました。保健学部リハビリテーション学科の石井博之教授と研究室の学生の協力を得て作った調査票をもとに、旅館や観光施設のユニバーサルデザイン、温泉街の歩道や施設の段差、道幅や標識の位置などを測定し、その結果を考察しているところです。町では学生たちの提案を今後の観光振興の参考にしたいと話しています。こうした活動について、小堀教授は「関わってくださった地域の方々への感謝も込めて、学生と共に、観光客の心と体を健康にする旅、ユニークでワクワクする旅の形を提案していきたい」と話しています。
(2023年5月31日発行 杏林大学新聞29号より)