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医学生が障がい者の暮らしを体験して学んだこと

 医学部3年生は、地域で暮らす重度身体障がい者の介助見学・体験を軸とした地域医療体験学習を「NPO法人境を越えて」の協力を得て実施しました。

 学生たちは体験を実施するにあたり事前学習として当事者講師らによる「地域で生きること」「地域で暮らすこと」などについての講義、透明の文字盤を使用したコミュニケーション体験等を行いました。

 実際の体験は、学生がペアとなり約15組ずつ、9月の毎土曜日に伸べ67名の当事者かたのもとでさせていただきました。

 10月10日の事後学習では、体験した内容や得た知見・課題を共有し合うとともに、長田直也さんと仲宗根啓さんを講師に迎え、「障がいって何?当たり前の見方を変えてみよう」「医師としてのスタンス」をテーマに話をしていただきました。
 授業の最後には、「NPO法人 境を越えて」の理事長でALS(筋萎縮性側索硬化症)当事者の岡部宏生さんから医師を目指す学生たちへ向けて、障がい者や高齢者、安楽死、戦争などを例に「人間が生きる」ということについて日々深く考えてほしいというメッセージが代読されました。

地域体験実習の感想(一部)

体験ではじめて車いすは電車での移動時間が我々の倍以上かかるとかエレベーターの狭さや少しの段差がどれだけ不便かがわかりました。
我々がその時何を食べてどこに行きたいのか選ぶように、障がい者の方も「その場で決める。
やりたいことをやる」のが当たり前になるべきだと思う。
「病院は居心地が悪い。先生は介助者に話を聞きたがるし、食べたい時間、寝る姿勢など人によって違うものを統一して強制しようとする」
この言葉は覚えておきたい。障がい者、健常者ではなく、一人一人違った人間だということ。
「みんな違ってみんないい」社会を実現したいと思う。
私たちは無意識に障がい者という言葉を主語にしがちです。
しかし、一人一人障がいの重さやできること、考えが違います。
障がい者という言葉を主語にしてしまうのは、どこかで健常者とは違うと思ってしまっているのかもしれない。
今回様々な気づきを得たが、こうした事が起こるのは、自分も含め世の中の人の想像力の乏しさにあると考える。
自分がもし車椅子の立場になったとき、すれ違う人からじろじろ見られたり、狭い売り場を通るときに白い目で見られたりしたらどう感じるだろう。
自分がされて嫌なことを人にするべきではないのです。
「医師は患者としてではなく、ひとりの人として接してほしい」と話されていた。
医師は患者の病気を治すだけではなく、その人がどんな価値観や考えを持っているのか、
どんな人生を送ってきたのかにも関心を持ち、対話することが大切だと感じた。
「ALS・呼吸器がついている・胃瘻あり・気管切開」これだけを聞いて受け入れてくれない医者が実際にいる現状。
でも患者を目で見て理解できればそうした判断にはならないのではとヘルパーさんが話していた。
自分の目で見て、患者さんと触れ合うことが理解する一番の近道で、それがこの体験の意義ではないかと思った。
「医者になっても今の庶民的な金銭感覚を忘れないように」と教えていただきました。
患者さんに寄り添える金銭感覚を持つことは治療法を決める上などでとても重要であると再確認しました。
例えば、酸素吸入器を付ける判断基準に満たなかったとしても、数字だけで判断するのではなく、
患者の状態をみるなどして一人一人に寄り添って、必要な処置をするべきだと思った。
体が勝手に動いてしまうのに、「動かないで」などと心無い言葉を言う人もいる。
採血は特に体が動いてしまうそうです。
今回の学習を通して、障がい者との関わり方を見直して、あたたかい診察ができるようになりたい。
〇〇さんご夫婦は障害を理由に何かすることを諦めていないのがすごいと感じた。
ご夫婦が活動することで社会が、足りない所、気づかない所に目を向けるきっかけとなり、
障がい者が生活しやすい社会が少しずつできていくと感じた。
意思の疎通、食事、外出時の安全確保など体験を通して介助の大変さを感じた。
同時にヘルパーさんたちは毎日この仕事を嫌な顔ひとつせずむしろ楽しげに行っていて本当に素晴らしいと思った。
医師になったら、ヘルパーさんたちのように患者さんに寄り添い、診察ではきちんと患者さんに向かい、
喋りが困難でも質問を重ねて少しでも寄り添いたいと思った。
身体的障がいがある人にとっては、その人の持っている機能を維持することやしたい生活をさせることが大事だということがわかりました。
自分にとっての当たり前があるように、患者さんにとっても当たり前の生活があることを考えて、
患者さんと向き合っていきたい と思います。
授業で多発性硬化症やALSは進行を遅らせ、延命することが可能だと学んだが、延命のためだけに治療を続ける事には疑問があった。
体験では、こうした疾患を抱える人は、疾患と共生しながら、新たな目的や楽しみを見つけて生活していることを学んだ。
人の生きる理由とは、日々の生活の中に喜びや楽しみを感じるためにあると理解し、
そのための治療が重要だということを実感した。

2024.10.28