11月20日、スタンフォード大学主任研究員で医師の池野文昭先生による講演「私の道 失敗を選ぶということ」が三鷹キャンパスの医学部講義棟Aで開催されました。これは、医学部学生会の学生たちが企画したもので、会場の教室には40人を超える学生が集まり、池野先生の話に聞き入りました。
池野先生は、自治医科大学卒業後、静岡県内で地域医療に従事し、2001年に米国スタンフォード大学に留学。2013年に国内で医療機器専門の投資会社MedVenture Partners, Inc を起業し、2015年にStanford Byer Center for Biodesignのジャパンバイオデザインのプログラムディレクターに就任しています。
講演で池野先生は、「失敗を恐れず挑戦することの大切さ」について自身の体験をもとに学生たちに語りかけました。池野先生は、静岡県で地域医療に従事していたころ、救急患者の搬送に県の防災ヘリを使用するきっかけをつくりました。このことから、前例がなくてもあきらめず、日本の将来を一生懸命に考えることが大切だと力説。「小さなことでも迷っているなら行動してみよう。それがきっかけで社会を変える大きな動きになるかもしれない」と学生たちにエールを送りました。
この講演会を企画した医学部学生会 会長の岡田直樹さん(3年生)と外務補佐の佐々木彩葉さん(3年生)に感想などを聞きました。
―講演会の感想を聞かせてください
【岡田】『失敗しないための唯一の方法は何もしないこと』という池野先生の言葉は印象的でした。自分は今の「失敗しない自分」で満足しているのではないか、「これがいい」ではなく「これでいい」で選んだつもりになっているだけではないのか、と自身に問いかけました。
自分で何かを選んで、全力でその道を正解にしようとして、それでも失敗したなら納得できます。しかし選ばなければ、選んだ道の自分を一生頭から払えずに、悔いを抱えることになる。失敗するとわかっている道を敢えて選ぼうとはしませんが、もし懸命に取り組んでその先にあるものが失敗だったとしたら、私はそれを「選んだ」と誇れると思うのです。今回の講演会のタイトル「私の道 失敗を選ぶということ」には、そういう思いを込めました。講演後のアンケートでは多くの学生が私と同じ言葉が印象に残ったと言ってくれ、とても嬉しかったです。
【佐々木】「差ではなく違いで勝つ」という話は、人生の様々な場面においてとても参考になると感じました。相手と戦うのではなく、話し合いの中で解決策を見つけるときには、同じ舞台でどちらが優れているかを検討するのではなく、違う方法、違う道からアプローチし、より良い解決策を探ることが必要だと学びました。
―これからのことを聞かせてください
【岡田】池野先生の話を聞いてから自身の視点が変わりました。これまでの学生生活では、任されたことに取り組んでいる時は自分一人で頑張っていると思いがちでしたが、少し顔を上げて周りを見回してみると、実は他の人にとても助けられていると感じることが増えました。自分のやることをしっかりやりつつ、しかし周りへの感謝を忘れない医師でいたいと思います。
【佐々木】池野先生は、「シンパシー(同情)とエンパシー(感情移入、共感)の違いはなにか」という話をされました。人の痛みを気の毒に思う「同情」がシンパシーで、その先の「共感」をもって行動に移すことができるのがエンパシーだということでした。医師になると、毎日人の痛みに向き合うことになります。痛みとは、身体の痛みだけではなく心の痛みもあります。私は患者さんの身体の痛みを癒すだけでなく、心の痛みにも向き合い、気の毒に思うだけでなく、自分自身も痛みを感じ、行動に移すことの出来る医師になりたいと思います。