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[海外研修]ポートランド州立大学研修(2018/9/9〜9/18実施)

2018年度 ポートランド州立大学研修から帰国した学生の体験記を紹介します。


渡航期間:2018.9.9~2018.9.18
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保健学部看護学科看護養護教育専攻 大野 あずさ

 私は今回8泊10日でポートランドにて海外研修に参加した。今回は自分の目で見てきたポートランドについてと、見学させていただいたいくつかの施設について報告したい。

〈ポートランドについて〉
 ポートランドは緑の多い街であり、アメリカで住みたい街No.1とされている。少し歩いたり街中に通る電車に乗れば、買い物もしやすく住みやすい街であると感じた。しかしポートランドはここ数年でホームレスの方が急増したという話を事前に聞いていた。たしかに道を歩いているとホームレスの方が目につき、中には子供連れの家族もいた。車で移動している際には、道路にテントを立てて生活している人もいた。そのような人たちの多くは病院へ行くことも少ない。日本とは保険の仕組みが異なるため、医療を受けるには高額の費用が必要である。救急車に乗ることにもお金が必要である。そのような状況を目の当たりにすると、日本は国民皆保険のおかげで多くの人が医療を受けやすい環境になっていることを実感した。

〈OHSU高性能ロボット利用技術研修センター〉
 OHSUのシミュレーションセンターは、実際の現場で起こりえる状況を想定した訓練を行うことのできる施設である。シミュレーションを行う目的は、安全性やスキルの向上、医療にかかる経費の削減、能力ベースの教育の4つである。実際のシミュレーションルームにはカメラが設置されているため、シミュレーションを行う学生は振り返りを行うことができる。これにより、学生の成績を付けるだけでなく、学生同士で話し合いを行い、常に最高の医療技術が提供できるように訓練をしている。また学生はシミュレーションにより、「Teamwork」「Leader ship」「Communication」「Experience Learning」「Crew/Crisis Resource Management」を学ぶ。そのため24時間いつでも学ぶことができるようになっていて、医学部、歯学部、看護学部の学生が多く利用している。さらに高性能のマネキンを利用したシミュレーションだけでなく、現地の俳優がこのセンターに登録しており実際の人間を介してシミュレーションも行うことが可能である。
 実際にこのセンターを見学させていただき医療現場に出る前から様々な状況を想定した学習ができることは、とてもいい環境であると感じた。日本では現場に出る前には教科書や実習に出て学ぶことしかできないため、多くの状況が初めてのことになる。何もわからない状態で対応するよりも、自分の中に実践的な知識がある方が落ち着いた対応ができ、自信にもつながるのではないだろうか。また私は出産のシミュレーションを実際にお手伝いさせていただいたが、これは貴重な体験であった。3年生の実習では自然分娩の様子は見学できず、どのようにして子供が生まれてくるのかは教科書でのみ学んだため想像がしにくい。しかし自分の目で確かめるだけでなく自分の体を使って体験すると、よりリアルな状況を把握でき記憶に残りやすいと感じた。日本での看護技術の授業でもマネキンを使うことはあるが、できることは少ない。今後、高性能のマネキンを使った授業が導入されると看護師の看護技術の向上や、看護学生の学習意欲の向上にもつながると感じた。

〈ドナルドマクドナルドハウス〉
 ドナルドマクドナルドハウスは自宅から遠く離れた病院に入院する子供の付き添いをするご家族が、自宅にいるようにゆったりと過ごせる空間である。世界には約360施設、日本には12施設が開設されている。ここを利用する費用は無料であり、ほとんどのものが寄付や助成金、ボランティアで成り立っている。今回訪れた施設は全部で25部屋あるが、この日も満室であった。ポートランドにある2つのドナルドマクドナルドハウスを年間1200家族が利用しに来るが、その裏では3000家族にキャンセルを伝えている状況である。この建物の特徴の1つとして、すべての部屋が病院とは反対の方向を向いている。これはこの施設を利用している家族が、施設の中にいる間は病院のことを忘れられるようにという意味がある。また施設ではミュージックセラピーやムービーナイト、マッサージなど様々なアクティビティがあり、滞在している家族が心を落ち着けて過ごせるような工夫もされている。毎日病院にいる子供の看病をしている家族の心身ともに疲労がたまる様子は、3年生の時の小児病棟実習の際に目の当たりにしたことである。これらのような日常の中にあるさりげない工夫が家族のために必要であることを強く感じた。
 またドナルドマクドナルドハウスは両親だけでなく兄弟も含めた家族が利用するため、子供たちが楽しんで過ごせるような内装になっていたり、子供が遊べる場所がいくつもあったりなどの工夫がされている。この施設に滞在する家族の中には1年以上滞在する家族もいる。ここでの生活が兄弟にとっても嫌な思い出にならないような工夫があるのだと考えた。この施設に行くまで名前を聞いたことがある程度で、どのような場所なのかということを知ろうとはしなかった。今回の研修によりどのような場所なのか、このような施設があることの意味、必要性を考えるきっかけになった。

〈高齢者施設〉
 アメリカの高齢者施設は継続的なケアが特徴であり、たとえ介護度が上がったとしても施設を出ることなく継続してケアをしている。自立して住みたい人も介護が必要になればケアギバーと呼ばれる人たちの手を借りながら暮らすことができる。そのため施設の中にはサロンや郵便局があり、外に出なくても大丈夫なように設備が整っている。日本の高齢者施設は自宅に戻ることを希望する人が多いこともあり、日常生活が施設の中で済んでしまうようなつくりにはなっていない。介護が必要となれば施設に入ることも増えてきていると感じる。このような施設があれば高齢者の方の考えや希望を尊重した生活が送れると考えた。そのためにもケアをする役職の充実と設備の充実が必要であると感じた。
 また私たちはこの施設で折り紙と書道をしながら入居者の方と交流をすることができた。交流した方々は日本について関心があり、積極的にアクティビティに参加してくださった。またポートランドについての話をしてくださる方や、自分自身の話をしてくださる方もいた。英語が苦手であっても自分の力で説明をしたり話を聞くことで楽しい時間を過ごすことができたと考える。しかし中には理解することが難しい場面もあり、英語力の足りなさを痛感した。これはこの施設だけでなく今回の研修を通して感じたことでもある。帰国してから英語の勉強、とくに日常で使えるレベルの英語力を身に付けたいと少しずつ思っている。英語を使える医療職がいることは、日本を訪れる外国人旅行者や日本に住む外国人が日本の医療を利用する際の手助けになるのではないだろうか。言語の壁から医療を受けることを難しいと考える人も中にはいるだろう。そのような人たちの橋渡しになるというのも一つの大切な役割であると考える。このようなことも視野に入れて、今後の学習や将来のビジョンを考えていこうと思う。8泊10日はあっという間であったが、大いに刺激を受けた研修でありとても良い経験ができたと思える研修であった。