杏林大学医学部形成外科学教室の尾崎 峰教授を中心としたグループは、多施設臨床研究で、切除困難な静脈奇形患者の硬化療法に用いられる薬剤、モノエタノールアミンオレイン酸塩の効果と安全性を証明しました。これにより、2024年12月27日に治療薬としてオルダミン(薬品名)が薬事承認されました。
静脈奇形とは、全身の各所の静脈が海綿状や袋状に拡張し、溜まった血液が瘤のように隆起する先天性の希少疾患で、しばしば疼痛や運動障害などを伴います。顔面領域に好発するため、小児期から日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。治療法としては主に切除、またはそれが困難な場合には薬剤を注入し血管の溜まる箇所を潰す硬化療法が適用されます。しかし、世界的にみても薬事承認や保険適用された硬化剤はまだ存在していないのが実情です。
そのため、本学を含めた全国8か所の大学・付属医療施設等で2021年から2023年にかけて多施設臨床研究を実施しました。小児から成人44人を対象に、モノエタノールアミンオレイン酸塩溶液を注射投与し、3か月後のMRI検査で病変容積の変化を評価し、さらに疼痛の度合いを検証したところ、有意な改善を示しました。
今回の薬事承認を受けて尾崎教授は、「多くの他施設の先生や事務局の方々、そしてコメディカルの方々のお陰で、ここまでたどり着けることができました。しかし、オルダミンの薬事承認だけではまだ道半ばであり、安全で確実な保険医療として硬化療法を患者さんに届けるためには、硬化療法という手技を保険収載させる必要があります。現在、早期(令和8年度)の保険収載を目指して新たに対策チームを立ち上げて取り組んでいます」と展望を語っています。
また、本研究論文はオープンジャーナルである『PLOS One』に2025年1月31日付で掲載されました。
なお、本研究は、AMED臨床研究・治験推進研究事業(JP20lk0201115)の支援を受けて行われました。
2025年2月4日