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地域に出て学ぶ――医療とケアの交わる場へ

医学部医学教育学教室 三枝七都子

 今年も8月18日から20日にかけて福島県いわき市鹿島町で「いとちツアー」に参加しました。「いとち」とは、社団医療法人養生会かしま病院が企画する、医療=「い」と地域=「ち」の担い手によるコミュニティプロジェクトです。その一環として行われる本ツアーでは、学生がいわき市内各地をめぐり、医療と地域のつながりを学びます。

 杏林大学からは、2022年度の初回ツアーより継続的に医学部の学生が参加しており、昨年度からは保健学部も加わりました。今年度は保健学部看護学科4名、医学部4名の計8名の学生と教員2名が参加しました。さらに、東北医科薬科大学医学部の学生3名も合流し、多職種・他大学・学年間の交流を通じて、地域に根ざした学びを深める機会となりました。

他学部とともに学ぶ

 今回の大きな特徴の一つは、医学部と保健学部看護学科の学生が昨年度に続いて共に参加した点です。講義や実習ではなかなか交わる機会が少ない両学部の学生が、同じ地域を歩き、地域住民や医療関係者の話を聞くなかで互いの視点を共有しました。

 看護学生からは、医学生との交流を通じて「看護師の専門性を改めて実感し、自分の職業に誇りを持てた」「医師が上に立つという従来のイメージが変わり、互いに支え合うチームの一員として学んでいることを感じた」といった声が寄せられました。一方、医学生からも「学ぶ環境が異なることで視点が違う」と気づきがあったほか、同じ医療を志す仲間として、看護の専門性や地域の方々の視点から学ぶことの大切さを実感する機会となりました。
 こうした相互の発見は、将来の医療チームを担ううえでの理解と協働の基盤を育む貴重な学びとなりました。

地域に出て学ぶ

 いわき市の各所を訪問し、地域の歴史や震災後の取り組みを体感しました。地域の人びとの語りからは、身体がその人の暮らしや土地の歴史を映し出す存在であることが示され、医療と地域が密接につながっていることを改めて考えさせられました。学生たちは、こうした「地域で生きる」ことの具体的な姿に触れるなかで、医療人として自分たちにできること、そして医療の役割を生活の文脈の中でどう位置づけるかを考え直す機会となりました。

今後に向けて

 いとちツアーへの参加は今年で4年目となり、学生たちからも「地域で学ぶことで医療の広がりを実感できた」と好評です。今後も継続的に参加を重ね、地域に根差した医療やケアの学びを学生とともに深めていきたいと考えています。

2025年9月17日