国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、略称:国循)の豊田一則副院長および杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)副院長・脳卒中センター長の平野照之教授を共同研究代表として、国内18施設(別表1)で実施した無作為化比較試験「T-FLAVOR」の結果を発表しました。これは、脳梗塞発症後4.5時間以内に投与する治療薬の試験です。この試験の結果、現在使われている薬であるアルテプラーゼに比べて、テネクテプラーゼ(国内未承認薬)の方が、詰まった脳の血管が再開通する率が明らかに高いことがわかりました。
本試験の事務局代表を務めた国循 脳血管内科の井上学医師らを中心に結果を取りまとめ、国際医学誌JAMA Neurologyオンライン版に現地時間2026年6月1日(日本時間6月2日)に掲載されました。
急性期脳梗塞では、詰まった脳の血管をできるだけ早く再開通させることが後遺症を軽くするのに重要です。血栓溶解療法は脳梗塞に不可欠の治療法ですが、現在の治療薬アルテプラーゼによる治療効果は十分とは言えません。アルテプラーゼを改変した新薬テネクテプラーゼにはより良い治療効果が期待され、海外では既に薬事承認やガイドラインへの掲載が進んでいます。日本にはもともとこの薬剤が存在せず、企業主導の開発試験も期待できませんでした。国内承認の遅れを防ぐためにも、薬剤を海外から輸入して医師主導で臨床試験を行い、日本人におけるテネクテプラーゼの有効性を証明する必要がありました。とくに国内でのアルテプラーゼの承認用量は0.6 mg/kgで国際標準用量0.9 mg/kgと異なり、日本で試験を企画しないとこの国内独自用量との比較は出来ませんでした。
本研究は、発症4.5時間以内の主幹動脈閉塞を伴う脳梗塞患者を対象とした、無作為化比較試験で、患者はテネクテプラーゼ(0.25 mg/kg)またはアルテプラーゼ(0.6 mg/kg)を1:1で無作為に投与し、その後血管内治療(血栓回収)を施行しました。
・解析対象:2022年~2025年登録218例

本研究は日本人に初めてテネクテプラーゼを投与した試験であり、また世界標準用量のテネクテプラーゼを国内独自用量アルテプラーゼ(0.6 mg/kg)と比較した初の試験です。日本人においてテネクテプラーゼは安全性を損なうことなく、早期再開通率を高め、後遺症を軽減する可能性を示しました。またテネクテプラーゼはアルテプラーゼが1時間の点滴静注を要するのに対し、1回の短時間静注で投与でき、病院内でのワークフロー簡素化や急性期患者の救急搬送、ドクターヘリを含めた遠隔医療を考えるうえでも、非常に有用です。
現在この試験の結果などに基づいて、厚生労働省でテネクテプラーゼの承認に関する検討を行っています。
表1 T-FLAVOR試験実施施設
| 神戸市立医療センター中央市民病院 | 聖マリアンナ医科大学東横病院 |
| 倉敷中央病院 | 東海大学医学部付属病院 |
| 岩手県立中央病院 | 京都第二赤十字病院 |
| 日本医科大学付属病院 | 埼玉医科大学国際医療センター |
| 長崎大学病院 | 鹿児島市立病院 |
| 熊本赤十字病院 | 済生会福岡総合病院 |
| 小倉記念病院 | 聖マリア病院 |
| 国立病院機構九州医療センター | 杏林大学医学部付属病院 |
| 兵庫医科大学病院 | 国立循環器病研究センター |
著者:井上 学、平野照之、福田真弓、河野浩之、田中健太、坂井信幸、ほか
題名:Standard-dose tenecteplase vs. low-dose alteplase for acute ischemic stroke from large-vessel occlusion: a randomized clinical trial
掲載誌:JAMA Neurology
DOI:10.1001/jamaneurol.2006.1590
試験登録:jRCTs051210055
本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。
・ 日本医療研究開発機構(AMED:JP20lk0201109、JP24lk0221186)
・ 国立循環器病研究センター循環器病研究開発費(21-4-2、24-B-6)
・ 国立循環器病研究センタークラウドファンディング001
杏林大学 広報室
TEL: 0422-44-0611 koho@ks.kyorin-u.ac.jp
2026年6月2日