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JICA草の根技術協力事業「サンパトンモデル普及プロジェクト」最終報告会を開催

 

 杏林学園は、独立行政法人国際協力機構(JICA)からの委託を受け、2024年7月からタイ北部のチェンマイ県およびメーホンソン県において、HIV感染症患者の医療アクセス向上を目的としたプロジェクトを実施してきました。本プロジェクトでは、病院で治療を受けている患者のうち、病状が安定しているなど一定の基準を満たした方を地域の保健センターへ紹介し、自宅に近い施設で継続的に治療を受けられる体制づくりを進めてきました。プロジェクトは2026年7月に終了予定であり、その成果を共有するため、2026年6月11日にチェンマイ市内で最終報告会が開催されました。報告会は、本プロジェクト、チェンマイ県衛生局、および米国疾病予防管理センター(CDC)の共催により実施されました。
 報告会では、チェンマイ県衛生局長のDr. Waranyou、JICAタイ事務所の岡村夏弥様、本プロジェクトのプロジェクトマネージャーである北島による開会挨拶の後、チェンマイ県衛生局のDr. Sonyudから県内のHIV流行状況と流行終結に向けた取り組みについて報告がありました。続いて、プロジェクト現地調整員のDr. Saiyudによる事業総括のほか、プロジェクト実施地域であるChiang Dao郡、Chai Prakan郡、Mae La Noi郡、Pang Mapha郡の代表者が、それぞれの地域における取り組みと成果を発表しました。その後、東京医科大学八王子医療センターの平井由児教授(杏林大学医学部卒業生)および徳山麻里子看護師(杏林大学病院エイズコーディネーターナース)による質疑応答とコメントが行われ、最後にDr. Waranyouから総括コメントが述べられました。


 2026年5月末時点で、4地域合計100人を超える患者が保健センターで継続的に治療を受けています。患者満足度は病院通院者と同程度であり、多くの患者から高い評価を得ました。保健センターで治療を受けられるようになったことで、通院時間や交通費の負担が大幅に軽減され、仕事を休まずに受診できるようになったほか、山岳地域特有の長距離移動に伴う交通事故のリスクも減少しました。
 また、一部の地域では、病院と保健センターが患者情報を共有するオンラインプラットフォームを構築したり、ウイルス量測定のための採血を保健センターで実施し、その結果をオンラインで知らせるなど、地域の実情に応じた創意工夫も見られました。プロジェクト終了後も保健センターでの受療継続を希望する患者が多く、本事業の有効性が示されました。
 午後には、「サンパトンモデル」のさらなる普及と質の高いケアの実現に向けて、各郡の代表者によるパネルディスカッションやグループワークが行われました。報告会にはチェンマイ県内25郡のHIV担当者も参加し、それぞれの地域における患者支援の現状や課題について活発な意見交換が行われました。 


 本プロジェクトの原点は、2013年にサンパトン病院と共同で実施したHIV感染症患者の満足度調査にあります。この調査を契機として、サンパトン郡の保健センターにおけるHIVケアの質向上と、病院から保健センターへのタスクシフトの実現を目指した取り組みが、2017年から2019年にかけてJICA草の根技術協力事業として実施されました。その成果として構築されたケアシステムを「サンパトンモデル」と呼んでいます。
 本プロジェクトは、そのサンパトンモデルを北タイの他地域へ展開することを目的として開始されました。新型コロナウイルス感染症の流行によりプロジェクトの開始が約3年遅れましたが、チェンマイ県およびメーホンソン県の4地域においてモデルの導入を実現し、多くの患者が地域で継続的に治療を受けられる体制が整いました。
 HIVに対するスティグマや差別の解消など、今後も取り組むべき課題は残されています。しかし、この2年間に各地域で築かれた実績を基盤として、今後は両県衛生局のリーダーシップのもと、サンパトンモデルの継続とさらなる普及が進み、HIV感染症患者の医療アクセス向上につながることが期待されます。
 本プロジェクトの実施にあたり、ご支援、ご協力を賜りましたタイおよび日本の関係機関、医療従事者、地域保健関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。

■これまでの報告はこちら
北タイ・JICA草の根技術協力事業(第7報) 保健センターでのインタビュー
北タイ・JICA草の根技術協力事業(第6報) メーホンソン県の病院と保健センターを訪問
北タイ・JICA草の根技術協力事業(第5報) チェンマイ県の2つの地域での進捗報告
北タイ・JICA草の根技術協力事業(第4報) 現地の保健センタースタッフを対象に研修会を開催
北タイ・JICA草の根技術協力事業(第3報)本邦研修を実施
北タイ・JICA草の根技術協力事業(第2報)キックオフミーティングを実施
北タイでHIV感染者のケアに関するJICA草の根技術協力事業が始動

■プロジェクトのFacebook: https://www.facebook.com/groups/sanpatongmodel

総合政策学部 教授 北島 勉

2026年6月26日