米国サンディエゴで開催された第66回米国血液学会(期間:2024年12月7日-10日)において、12月8日に脳神経外科 永根教授が「再発または難治性中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)161症例を対象としたチラブルチニブの有効性、安全性、治療状況に関する多施設共同後ろ向き観察研究」の中間解析データを口頭発表しました。
チラブルチニブは2020年に日本で承認された比較的新しい分子標的治療薬であり、治験ではチラブルチニブ治療を受けた患者さんが44例と少数であるため、より多い数の患者さんにおける薬剤の有効性や安全性の検証が求められていました。そこで、杏林大学は小野薬品工業株式会社と共同で161例のPCNSL症例に対するチラブルチニブの有効性および安全性を評価するROSETTA試験を実施し、その結果を第66回米国血液学会で報告しました。
米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)は1958年に設立された米国の血液領域最大の学会で、毎年12月に開催される年次総会には3万人を超える医療従事者が参加し、血液領域の最新かつ重要な研究結果が報告されます。永根教授が研究代表者を務めるROSETTA試験データがASH2024で口頭発表に採択されたことは、この試験結果の報告が非常に重要で関心が高い治療法であることが示唆されます。永根教授による現地でのROSETTA試験の口頭発表では約300人の参加者が聴講し、同セッションで発表された6演題のうち聴講者からの質問が最も多く、注目度が高い口頭発表でした。
【永根基雄 脳神経外科教授のコメント】
中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は脳や中枢神経に生じる比較的悪性度が高いリンパ腫で、抗がん薬や放射線による治療が一般的ですが、5年生存割合は50%ほどにすぎず予後不良な悪性脳腫瘍に属します。今回のROSETTA試験データがASH年次総会で口頭発表に採択されたことは、この治療法による研究結果がPCNSL治療において高く注目されていることを意味しています。今後はこの結果をもとに、PCNSL患者さんへのより良い治療法を開発していければと思っております。
医学部脳神経外科学教室
2025.1.14
参考情報
・ROSETTA試験概要(jRCT 臨床研究等提出・公開システム)
・日経メディカルOncologyニュース 2024年12月9日「再発・難治性の中枢神経系原発リンパ腫に対するチラブルチニブの有効性と安全性が国内の観察研究で確認【ASH 2024】」として紹介
2025年1月14日