2025年8月、私は福島県いわき市の鹿島地区で行われた2泊3日の地域医療体験に参加しました。医学という自分と異なる分野を学ぶ学生と活動できること、現代社会において重要性を増す地域医療について、基礎から学び直したいと思ったことが参加の大きな動機でした。
実際に鹿島地区で過ごして気づいたことは、地域医療の概念が私の想像以上に広いものであったという点です。病院と地域が連携するだけでなく、地域住民同士の支え合いや、一見医療とは無関係に思える1本の木や山など日常の風景が、結果的に住民の健康や安心につながっていることを実感しました。また、患者さんを理解するには、単に話を聞くだけでは不十分で、その人が生きてきた土地の歴史や背景を踏まえて価値観がどのように形成されたかを考える視点が不可欠であることを学びました。
スタッフの方々は、私たちに町を案内してくれたり、交流したりする中で地域の歴史や文化を丁寧に教えてくれたので、患者さんと関わる際にとても役に立ちました。
共に活動した杏林大学の医学生からも多くのことを学びました。常に疑問を持って学びを深めようとする姿勢は私自身も見習いたいと思いました。「看護師の日々の観察があるからこそ医師は診察ができるのだと実感した」という医学生の言葉に、私は看護師の専門性や役割を再認識し、大きな誇りを感じました。地域医療の現場では、医師や看護師、様々な医療者は互いの専門を尊重し合いながら、患者さんを中心にした医療を提供していました。
この体験を通して、私の中では大きな変化がありました。まず、多職種連携における看護師の仕事や役割を間近で見たことで、看護師という職業に以前より強い誇りを抱くようになりました。次に、地域医療への理解です。その土地の歴史や文化、自然や建物など、生活を取り巻くすべてが人々の心の支えになっていることをしっかり理解することが、地域医療には大切だとわかりました。何より誰もが安心して通院してもらうために看護師が果たす役割は大きいと感じました。
今回の学びを今後の実践につなげ、地域に根差した医療の担い手として成長していきたいと強く思っています。
※記事および各人の所属等は取材当時のものです
2022年保健学部臨床心理学科 卒業
2024年大学院保健学研究科 臨床心理学専攻 修了
国家資格 公認心理師取得
都内の介護老人保健施設で支援相談員として勤務
平井渉夢さん
(2024年6月取材)