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2025年度校外研修の実施について

 2025年12月17日(水)在外協定校からの留学生向けに日本文化体験、一般学生との交流を目的とした校外研修を行い、学生29名と引率者で池袋の東京芸術劇場にて「文楽」を鑑賞してまいりました。文楽とは、17世紀の大阪で発展を遂げた人形浄瑠璃の一つで、ユネスコの「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」にも記載されている伝統芸能です。この日は、「Discover BUMRAKU外国人のための文楽鑑賞教室」と題した特別プログラムとして実施されました。「万才」「国性爺合戦」の作品上演が行われましたが、義太夫節と三味線の演奏の中で操作される人形の演技は圧巻でした。演目は中国を舞台としたものであるため、中国人学生にも馴染みを持ってもらえたのではないかと思います。また、演目の他に人形遣い師の桐竹勘次郎氏とクリスグレン氏による日本語と英語による解説がありました。人形は重いもので10キロもあり、3人で息を合わせて操作していること等を人形操作の実践を交えて説明して下さいました。お二人の和やかで気さくな語りにより、普段知ることのできない伝統芸能の世界、文楽の魅力をより身近に感じることができました。伝統芸能に触れる機会が持てたことは、留学生にとっても貴重な体験となったのではないでしょうか。 校外研修に参加した学生からの感想を紹介致します。

〇曽 琪琪 ZENG QIQI (杭州師範大学交換留学生)

留学生として今回、池袋の東京芸術劇場で文楽を鑑賞したことは、私にとってほとんど「ゼロからの体験」であった。これまで文楽に対する印象は、「伝統的な人形劇」という比較的抽象的なイメージにとどまっていたが、実際に劇場に足を運んで初めて、文楽が日本を代表する伝統芸能として有する奥深い魅力を実感することができた。なかでも最も強く印象に残ったのは、《解説:文楽の魅力》において、司会者が実際に舞台上で人形を操る場面である。間近で観察することで、人形の一挙手一投足が決して「自然に動いている」わけではなく、操り手が高度な集中力と身体の制御によって、感情を正確に人形へと「注ぎ込んでいる」ことを初めて理解した。手のわずかな動きや、頭部の回転や静止に至るまで、いずれも長期的かつ体系的な訓練を経なければ成し得ない技である。その瞬間、その瞬間、人形に込められた表現の一つ一つが、長年にわたる鍛錬と技術の蓄積の上に成り立っているものであることを、強く実感した。このような理解を踏まえたうえで鑑賞した『国性爺合戦』では、観劇体験がより立体的なものとなった。全体を通して場面の転換は滑らかでありながら非常にテンポがよく、無駄な間を感じさせることなく、物語の連続性とリズム感が保たれていた。そこから、文楽が決して一人の演者によって成立する芸能ではなく、三人遣いの人形遣い、太夫、三味線奏者、さらには舞台スタッフを含む多くの人々の緊密な連携によって支えられている総合舞台芸術であることを強く実感した。各要素が相互に依存しているからこそ、舞台上の「滑らかな転換」が可能になるのだと感じた。初めて文楽を鑑賞した私にとって、この体験は人形劇に対する認識を大きく更新するものであると同時に、日本の伝統芸能が単に静態的に「保存」されているのではなく、厳密な技芸の継承とチームワークを通して、現代の舞台においてもなお生き生きと息づいていることを教えてくれた。

〇褚 軒妮 CHU XUANN(広東外語外貿大学協定校派遣学生)

12月17日、東京芸術劇場にて「外国人のための文楽鑑賞教室」を鑑賞した。プログラムは「万才」、人形浄瑠璃「国姓爺合戦」からなり、間には文楽についての解説もあった。万才や文楽をはじめとする日本の伝統芸能に触れるのは初めての経験であり、大変興味深く拝見した。中国にも影絵芝居など人形を用いた伝統演芸があるが、文楽はまた一味違う魅力を持っている。人形浄瑠璃は太夫による語り、三味線の演奏、人形芝居の三要素で成り立ち、さらに一体の人形を主遣い、左遣い、足遣いの三人が息を合わせて操る。演者同士の緊密な連携とが舞台を作り上げており、見どころに溢れる芸の深さを感じた。中でも特に印象に残ったのは、司会のクリス・グレンさんと人形遣いの桐竹勘次郎さんによる実演を交えた解説であった。クリスさんが人形遣いを試したが、慣れない手つきで女性の人形の動きがぎこちなくなった。それに対して、桐竹さんたちが操った人形はまるで命が宿っているかのように情感豊かで、人形の首の傾き、手の動き、軽やかな足取りなどの仕草が人間よりも人間らしく見えて、その違いには驚かされた。そこで改めて人形遣いの技術の高さと芸の奥深さに圧倒されたのである。太夫の語りも強く心に残った。役柄によって声色や話し方を巧みに変え、マイクを使用していないにもかかわらず、その声は広いプレイハウスの隅々にまで響き渡っていた。言葉の細かい内容までは理解できなかったものの、その迫力ある声の緩急と抑揚からも物語の展開や情感の起伏が伝わってくるようであり、すっかり引き込まれた。三味線の演奏もまた語りとお互いに呼応し、補完し合っている。解説によると、人形の主遣いになるためには、足遣いから修業を始めて、何十年間努力を重ねなければならない。その修業の厳しさと文楽の構成の複雑さを考えれば、継承が容易ではないことは明らかである。現在、時代の変化に伴い、世界各国に伝統文化の継承者不足が課題となっている。日本の素晴らしい伝統芸能である文楽が、末長く受け継がれ、これからも多くの人々の心を震わせ続けることを、心から願ってやまない。

2025.12.24 国際交流センター

2025年12月24日