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教員が語る専門分野のこんなところが面白い 教員リレーエッセイ

専門分野の「こんなところが面白い」Vol.2
講師・池田 尚広 (IKEDA, Naohiro)

 大学院で日中通訳・翻訳の技術を習得しながら、異文化間における翻訳の難しさ、可能性について考えてきました。その後、日中文化交流の現場で通訳に従事しました。そもそも通訳とはなんなのでしょうか。日本語と中国語の両方に堪能であれば、あとは一語一語を丁寧に置き換えれば通訳の目的は達成できるのでしょうか。実際には現場での限られた環境においてそんなことは不可能ですし、逆に誤解や齟齬を生んでしまう可能性もあります。双方に起こり得る誤解を予測し、最適な訳出を目指して工夫することは、日中両方の文化を知り、新しい世界に触れるきっかけになると思っています。

研究に欠かせないアイテム

実際に通訳が行なわれた際の音声を文字に起こして材料にすることがあります。教科書では日中対訳の完璧な訳文が掲載されていますが、通訳の現場では、話し手と聞き手の関係、事前原稿の有無、時間的制約など様々な要因があり、全く同じ訳出になるとは限りません。時には複雑な話を通訳者が整理したり、専門用語を聞き手の顔を見てわかりやすい言葉に置き換える作業が行なわれることもあります。実際の場面、環境でなぜそのような訳出が行なわれたのか、多角的に分析するのに非常に有用だと思っています。

研究する上で大切にしていること

通訳の実践的な感覚を忘れないことです。研究として行なう以上、理論を突き詰めることは最も重要ですし、現場での実用性からは乖離せざるを得ません。しかし、通訳は実践ありきの分野です。私の場合は文化交流が多いですが、通訳の現場には経済、医療、金融、IT等どんな分野も存在しますし、個別の現場から問題意識を発見することも多くあります。ですから、通訳について研究する上では理論第一、プラスα(現場感覚)というバランスを持つことが必要ではないかと思っています。

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