1997年3月 | 杏林大学 外国語学部 英米語学科 卒業 |
1997年6月 | 株式会社日本教育事業団 入社 |
1999年5月 | MA in TESOL, Graduate Program in English at Central Michigan University, U.S.A.(Teaching English to Speakers of Other Languages) |
2005年8月 | Graduate Program (Ph.D)in English at York University単位取得退学 |
2005年10月 | 杏林大学 外国語学部 専任講師 |
2009年4月 | 杏林大学 外国語学部 准教授 |
2013年10月 | Ph.D in English, Graduate Program in English at York University, Canada |
2016年4月 | 杏林大学 外国語学部 教授(~現在) |
言語学の中でも、ことばの意味を中心に考える分野でイントネーションを専門にしています。実際に書かれたり話されたテクストを分析し、私たちが状況に合せてどのように意味を作っているのかを研究しています。対象としている言語は英語ですが、ボノボという類人猿と人が英語を使ってどのようにコミュニケーションを取っているのかを研究していたこともあります。最近は、イントネーションに焦点をあてながら、英語のスピーチやレクチャーなどがどのように「段落化」されるかを研究しています。
音声に興味を持つようになったきっかけは、大学1年生の時に出会った先生の言葉でした。「英語は音なしに身に付けられない。そして練習しなければ、使えるようにならない。」高校までは勉強すれば英語ができるようになると信じていた私にとっては、とても衝撃的で同時にショックでした。それからネイティブスピーカーのように英語が話せるように、毎日英語を言う練習をしました。その後大学院に進学し、ある日「イントネーションは文法的である」という文と出会いました。当時は良く理解できていませんでしたが、音と文法を関連付けて考えることがなかったので、非常に興味を持ちました。それからは、ことばに対する考え方が大きく変わり、また深く理解できるようになりました。
“I love you”ってどういう意味ですか?こんな質問に、ほとんどの人は「私はあなたを愛している」のように答えてくれます。しかし話しことばではそれだけでなく、イントネーションによってその意味はいくつもあります。状況によって多少異なりますが、「私があなたを愛しているだって?(誰がそんなことを言った?)」、「(あまり興味ない感じで)愛してる」「愛してる、けど…」、「本当に愛してる」、など他にもいくつかあります。そう考えると、一つの英文を取り上げて、「この文を日本語に訳しなさい」という質問はあまり意味のないことなのでしょう。
それでは、なぜネイティブスピーカーはそうした違う意味を作り、また理解できるのでしょう?それは、彼らは異なるイントネーションの言い方とそれぞれの意味の違いを認識し、それらを選択肢として持っているからです。どのような言語にでも、無数に近いくらいのそうした選択肢から成り立っており、無意識のうちにまたは意識的に、選択を繰り返して私たちは意味を作っています。ことばだけでなく、人生においても同じことが言えます。例えば大学を選ぶ際に、それぞれの大学の価値を十分に理解したうえで受験校を決めれば、そこに意味がありますが、そうでなければ、少なくとも受験を決めた時点では意味のないことです。意味のある人生を送りましょう。
大学でどんな専門を学んでも、未来は誰にも分りません。私も、自分の未来を知ることができません。ただ、どうすれば自分にとって意味のある毎日を送れるかを、今専門にしている言語学から学んだ気がします。違いをしっかり認識(経験)することが重要であることは、学生にも伝えています。「幸せになりたければ、自ら不幸に挑め!不幸を知らなければ、幸せを知ることもできない」などと。どんなことも未来に役立てられるだろうし、意味のある未来につなげられる可能性があると思います。目先の利益にとらわれずに、大学でできる限り多くのことを学び経験することが、意味のある未来につながると思います。