呼吸器内科の石井晴之教授と小田未来任期助教が分担研究者となって行われてきた、日本医療研究開発機構の難治性疾患実用化研究事業「自己免疫性肺胞蛋白症に対する酵母由来組換えGM-CSF吸入の多施設共同医師主導治験」の成果が9月5日号の「The New England Journal of Medicine」 で発表されました。
これは新潟大学医歯学総合病院 臨床研究推進センター中田 光教授らを中心として行ってきた研究で、自己免疫性肺胞蛋白症に対し、サイトカインであるGM-CSFを吸入すれば、治療に効果があることを世界で初めて科学的に証明しました。
自己免疫性肺胞蛋白症とは、肺がうまく酸素が身体に取り込めず呼吸困難を発生したり、咳や痰、発熱などの症状をきたすこともある、指定難病の疾患です。
研究の治験では、杏林大学を含む全国12施設の呼吸器内科医が共同で自己免疫性肺胞蛋白症患者から治験協力の同意を得て、6ヶ月間のGM-CSF(実薬)または偽薬の吸入ののち、偽薬群の患者を含め4ヶ月間の治療を行ってデータを集め、解析しました。
これまで肺胞蛋白症の治療は、患者への負担が大きい全肺洗浄法が標準でしたが、本研究成果は、患者にとって負担が少なく、自宅での治療が可能となる新しい治療法を示すことができました。
石井教授は「今回の成果は、難病の稀少疾患をもつ患者さんにとって難病克服への期待につながるものではないでしょうか」と展望を語っています。