データサイエンスは、社会に存在する多様かつ膨大なデータから、人類にとって有益な知見を導き出すための学際的な領域であり、
その基礎的素養を備えた人材の育成は大学教育において急務となっています。こうした必要性を鑑み、本学では令和4年10月に
「杏林大学 データサイエンス教育研究センター」を設置しました。
付属病院を有する総合大学として、医療系をはじめ文系理系を問わず、学部横断的にデータサイエンスを活用できる人材を育成すること、
および、データサイエンス関連分野の研究を推進することを目的としています。
「データを分析し有益な知見を導き出す」
これは、一見あたりまえのことを言っているように思えます。実際、これは伝統的な自然科学が何百年も行ってきたことです。
ティコ・ブラーエが集めた膨大で精密な天体観測データが、ケプラーによる惑星運動に関する3つの運動法則の発見につながりました。
これは、データ駆動型科学の先駆的な事例といえるでしょう。
それでは、16世紀の天体観測と、昨今注目を集めている「データサイエンス」では何が違うのでしょうか?それは、
情報通信技術(ICT: Information & Communication Technology)の発達にあるといえるでしょう。
ICT技術の急速な発達によって、人類の扱うことのできるデータ量は飛躍的に向上しました。ペタバイト、エクサバイトを超えるデータは近年ビッグデータを呼ばれています。
16世紀の科学者と現在のデータサイエンティストの違いは、高性能のコンピュータをツールとして利用できること、そして、ビッグデータを扱えること、扱わないといけないことです。
また、コンピュータの性能の向上とビッグデータの台頭は人工知能(AI: Artificial Intelligence)の急速な発達を促しました。
このAIの台頭も近年データサイエンスが注目される要因の一つとなっています。
すなわち、21世紀において、「データを分析し有益な知見を導き出す」ためには、伝統的なデータ分析に必要な学問、すなわち、統計学等の知識に加え、
情報処理、人工知能などの情報科学系の知識を使う力、ビッグデータを現場で使える形に変え実装・運用する力が必要となっているのです。
そのような状況を踏まえ、杏林大学データサイエンス教育研究センターでは、
ITリテラシー
情報処理・情報科学
人工知能
統計学・数理科学
を分かり易く、実践的に教えることで、学部横断的にデータサイエンスを活用できる人材の育成を目指しています。
全学的な数理・データサイエンス標準カリキュラムの整備により、様々な分野の学生に数理・データサイエンスの基礎を学び、リテラシーを身に着ける機会を提供します。具体的には、数理・データサイエンスの教育プログラム、教材や指導方法などの開発と、MDASH(数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定プログラム)の推進を行ってゆきます。
医療分野、保健分野等における最新の人工知能(AI:Artificial Intelligence)、機械学習等を用いた研究の推進に取り組みます。
学内で行われる様々な研究活動における統計解析方法の妥当性の確認・相談と、統計的検定をはじめとした種々の統計解析手法の”正しい”知識の流布・啓蒙に取り組みます。