20年にわたって心臓手術の麻酔に携わる中澤さんは、「麻酔科医の仕事は、単に手術の際に患者さんを眠らせることではありません。手術の進行にあわせて、麻酔薬や鎮痛薬の量を調整したり、心臓の動きを助ける薬を使用したり、呼吸のサポ-トをしたりと多岐にわたります」と話します。急な出血や心筋梗塞、喘息発作などの合併症が起きた際には、治療も行うなど幅広い知識と素早い判断力が、患者の命を左右するといいます。
とくに心臓手術は数ある手術のなかでもっとも難度が高い手術のひとつです。必ずしも全員の手術がうまくいくわけではなく、手術後に意識が戻ることなく亡くなってしまう方もいるのが現実。「『手術が終わったら声をかけて起こしますからね』といって全身麻酔を導入します。患者さんは、私にすべてを任せて眠りについていくので、助けることができなかった際はいつも自分自身の無力さに打ちひしがれます」と話します。
「彼らの命を無駄にしないためには、私自身が常に学び、成長し、そして目の前の手術患者の安全を守ることしかないと考えています。医師は、常に学び続けなくてはいけない大変さはありますが、一生をささげる価値のある仕事だと思います」
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