私は一昨年に続いて日本外科学会定期学術集会の医学生の発表セッションに参加しました。今年度は完全Web開催となり、私は「臨床実習における外科手技体験実習に関する調査」をテーマに、8月15日に発表を行いました。開催時期がずれたことで不安もありましたが、無事に発表ができてほっとしています。今回Zoomで参加してみて独特の難しさもありましたが、今後はWeb開催の学会が増えていく可能性もあるので今回いち早く体験できたことは大変貴重な経験でした。卒業後も積極的に学会発表などに挑戦していきたいです。
また、低学年の頃から、外科学教室の先生の紹介でセミナーやサマースクールに参加させてもらい、外科志望の他大学の学生と交流することができました。学生として発表するのは今回が最後ですが、外科の学びの奥深さを教えてくださった先生方に感謝します。
以下、発表について報告します。
外科学教室では2016年度から臨床実習で、内視鏡的手技を修練するためFLS(Fundamental laparoscopic surgery)※の体験実習を行っています。私たちは、その体験実習を通して対象者のサーベイランス(内科・外科系志望動向、、過去のテレビゲーム経験等)と成績を調査しました。
※現在、米国では外科専門医試験の受験資格を得るために、FLS認定試験に合格することが絶対条件になっている
調査は、2018年度の医学部5年生94名に対して実施しました。FLS専用のボックストレーナーを使用し、5つの基本的なタスクのうち、(1)ペグの移動の速さと正確性の評価、(2)ガーゼを円形に切離する速さと正確性の評価、(3)結紮の速さと位置の正確さの評価を対象にしました。
はじめに、対象者に将来志望する診療科などの質問事項に回答してもらい、各タスクの成績と比較してその特徴を解析しました。
内科系と外科系志望者の間では、成績に差はありませんでした。しかしテレビゲーム経験に注目すると差が認められ、(2)は、ガーゼの丸のラインと実際の切り目のずれが、過去にテレビゲームをしていた時間が、週0-5時間の群で平均1.04㎠(はみ出たガーゼの面積)、週6時間以上の群で平均0.74㎠で、週6時間以上の群で正確性が高い傾向がみられました。(3)は、結紮の目標となるマークと実際の結紮の位置のずれが、同じく週0-5時間の群で平均0.67㎜、週6時間以上の群で平均0.21㎜でした。ここでも週6時間以上の群で正確性が高い結果が出ました(p=0.019)。
過去にテレビゲームを長時間していた学生は、手技が正確であるという結果になりました。
コントローラーの使い方や空間認識など、時間をかけて体験したことで慣れる部分があると推測されます。
本学では、学生アンケートに基づいて表彰されるBest Teaching Department of the Yearという制度があります。外科学教室は、2年連続で1位となり、とくに外科的手技の体験学習が評価されています。
一方で、急速に普及してきている鏡視下手術など専門性や難易度が高い手術は、経験と技術の確立がより一層求められます。体験実習は、学生のうちから外科手技に必要な基本的なスキルを学べる機会です。こうしたことからも、医学部臨床実習におけるFLSの体験実習は非常に重要と思われます。
[写真:Web発表を終え、外科学教室の先生、共同調査班の学生と。左から3番目が古田さん]
古田さんは、第120回日本外科学会定期学術集会において医学生セッション賞を受賞しました。
※記事および各人の所属等は取材当時のものです