私の実習地はパリ北東部の郊外の街BobignyのHopital Avicenneでした。この病院はパリ13大学の3つある大学病院のうち1番大きな大学病院です。パリ北部はアフリカ系、アラブ系移民が多く住む地域で、様々な人種の患者さんが来院します。基本は外来診察の見学で、毎週木曜朝のカンファレンス、金曜の病棟回診に参加しました。医師との会話は英語でしたが、看護師、患者との会話はすべてフランス語でした。診療内容は一般皮膚科でした。主任教授のPr. Cauxの専門は水疱性疾患で、他にも悪性腫瘍、角化性疾患、感染症等が専門の先生がいました。毎週水曜は小児専門外来も見学できました。
現地の学生は低学年から病院実習を行います。病棟では、学生2人に1人の患者さんが割り当てられ、日本よりも実践的な診療をしていました。私も外来診察で病変の診断を行い、液体窒素による処置等の非観血的処置を行いました。英語での会話が可能な患者さんの初診問診をしたときは、Prof. Meyerの臨床医学セミナーで練習したことが大変役立ちました。実習で印象に残った点が2つあります。1つは、様々な人種の患者さんがいることです。日本では、ほとんど日本人の皮膚疾患しかみていませんでしたが、特にアフリカ系患者の疾患の見え方は大きく異なり大変勉強になりました。2つめは、患者の文化的背景に対する理解の深さと医師の知識の多さです。実習期間中にイスラム教のラマダン月が始まりました。すべての医師は処方箋を書くとき、断食時の薬の飲み方の変更を加え対応していました。また、アフリカの一部地域の風土病の知識がないと診断できない症例もありました。
期間中は、パリ13大学の学生の家にホームステイしました。毎日メトロとトラムを乗り継ぎ約1時間かけて通学しました。パリ市内の観光に便利な場所に滞在できたので週末は様々な美術館、公園へ出かけました。
国外では文化、宗教、人種の違いを尊重した医療が行われていました。医療の枠を超えて様々なことを考える機会となりました。ますます国際化が進むと予想される日本で、医師を目指す者として、大変有意義な時間を過ごすことができました。
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